京都大学などの共同研究チームは、二酸化炭素(CO2)排出量ゼロを実現する新たなシナリオとして、大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)と、再生可能エネルギー電力起源の水素を用いた合成燃料、いわゆるe-fuel(合成燃料)を利用する炭素回収利用の活用を提示。このシナリオでは、合成燃料が世界のエネルギー需要の約3割を満たし、電化などの急速な需要転換を回避しつつ、CO2ゼロ排出を達成し得ることを示した。
京都大学などの共同研究チームは、二酸化炭素(CO2)排出量ゼロを実現する新たなシナリオとして、大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)と、再生可能エネルギー電力起源の水素を用いた合成燃料、いわゆるe-fuel(合成燃料)を利用する炭素回収利用の活用を提示。このシナリオでは、合成燃料が世界のエネルギー需要の約3割を満たし、電化などの急速な需要転換を回避しつつ、CO2ゼロ排出を達成し得ることを示した。 研究チームは今回、新たなCO2ゼロ排出シナリオとして、バイオマスやCO2回収貯留への依存の低減、エネルギー需要部門の技術転換速度の制約をモデルの入力条件とし、e-fuelの利用を拡大する炭素回収利用(CCU)活用シナリオのシミュレーションを実行。その結果、以下のことが明らかになった。 ・再生可能エネルギー起源の水素とCO2の直接空気回収による合成燃料を用いることで、2050年までに世界のエネルギー需要の30%を満たし得る。したがって、他のCO2ゼロ排出シナリオでは必須とされてきた自動車や家庭などのエネルギー需要部門における急速な電化を伴わずとも、CO2ゼロ排出を達成し得る。 ・合成燃料を製造するため、2050年までに必要となる再生可能エネルギー発電量は他のCO2ゼロ排出シナリオの1.5倍程度で、CO2直接空気回収量は年間10ギガトン以上となる。 ・CO2ゼロ排出達成に必要な追加費用は、他のCO2ゼロ排出シナリオの約2倍になる。 研究チームによると、合成燃料等の炭素回収利用シナリオは、エネルギー需要転換などが遅れた場合の代替となり得るが、課題も多いことから、電化などの対策も含めた包括的な戦略が重要だとしている。研究論文は、国際学術誌「ワン・アース(One Earth)」に2023年7月13日付けでオンライン掲載された。(中條)