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ラーメンインタビュアー岡崎美玖の一杯に込められた魂のストーリー #1

【アップデートし続ける佐野ラーメンの名店。新たな挑戦をし続ける想いに迫る】麺屋ようすけ(栃木・佐野)

2023年07月14日 12時00分更新

文● 岡崎美玖 編集● ラーメンWalker

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 初めまして。ラーメンインタビュアーの岡崎美玖(おかみく)と申します。

 ラーメン好きが高じて記事執筆、テレビ出演、YouTube「岡崎美玖の39麺」などSNSを通して発信をしており、今回から本コラムにて筆を取らせて頂くことになりました。

 名だたるラーメン業界の大先輩の方々が執筆され、学生時代からの愛読コラム。まさか私が執筆させて頂く日が来るなんて……!と、連載のお話を頂けて大変嬉しく思っています。

 “ラーメンインタビュアー”という肩書きを名乗るようになったのは、食べて感じる「味」だけではなく、作り手である「店主」の方にスポットを当てたいと思ったからです。インタビューを主とした取材活動をもとに記事などを作成しています。

 一杯に込められた魂の軌跡、様々なバックグラウンドを持つ店主の方がラーメン店を経営するに至った「ストーリー」をもっと色んな人に知ってほしい。そんな純粋なラーメン愛から現在の活動に至ります。

 有名なラーメン評論家である故・武内伸さんの名言に「ラーメンは鶏ガラ、豚ガラ、(店主の)人柄の3ガラ」がありますが、味はもちろん、ラーメン店主の方々の人柄に強く惹かれた私のラーメン愛を本コラムではしたためていければと思っておりますので、どうかお付き合いいただけましたら幸いです。

◆ラーメン好きになった原点である「佐野ラーメン」

 私は大学に入るまで、地元・栃木県で過ごしました。

 一人で学校終わりに地元のラーメン屋さんに食べに行くこともありましたが、物心ついたころには休日にラーメンを食べる!となると、ご当地ラーメンである「佐野ラーメン」を食べに行く日常を送っていました。

 父が運転してくれる車で家族揃って食べに行った回数はもう数え切れません。

 後から知った話ですが、母曰く老舗の佐野ラーメンはもうほぼ家族で制覇していて、思い返せば幼少期から佐野ラーメンの食べ歩きをしていました。まさに佐野ラーメンの英才教育ですね(笑)

 今回は私の自己紹介も兼ねて、ラーメンが好きになった原点の「佐野ラーメン」から『麺屋ようすけ』さんのお話をできればと思います。

◆「佐野ラーメン」を常にアップデートし続ける『麺屋ようすけ』

 東武佐野線田島駅より徒歩1分のところにある、『麺屋ようすけ』さん。

『麺屋ようすけ本店』(栃木県・佐野市)

 佐野ラーメンの最大の特徴ともいえる「青竹打ち」と呼ばれる、青竹で麺を伸ばす技法を取り入れ、佐野ラーメンの伝統・文化を継承しつつも常にアップデートをし続けています。

看板メニューの「ラーメン」(850円)

熱々の澄んだ薄い醤油色のスープは、コシのある麺に負けない、甘みとコクを強く感じます

コシがあってつるんとした喉越しと、手打ちならではの不揃い感がたまらない自家製麵

 2012年10月にオープンして以来、今や土日になると2時間待ちの状態も続く大人気店ですが、決してとんとん拍子でここまで来たわけではありません。

 2019年に起きた台風19号の影響で、大規模な被災により店舗が浸水し、一時営業休止をせざるを得ない状況から一念発起して営業再開を果たしたお店なのです。

 このあたりのお話は、別途インタビューさせて頂いた記事がありますので、ぜひ一緒にお読みいただけると幸いです。

「同じものでなく少しずつ変化を」被災を乗り越えた佐野ラーメン店主が語るご当地の未来

 「当時は店舗展開など考えてもいなかった」と語る店主・田邉庸介さんですが、それからというもの快進撃は止まることを知らず、2021年12月には『麺屋ようすけ 佐野新都市店』がオープンし、2021年5月にはラーメンWalkerキッチンにも初出店、2022年3月には東京駅内の東京ラーメンストリートに期間限定店舗としてもオープンするなど、県内に留まらず県外への出店も多く行っていきます。

 これまで都内で本場の佐野ラーメンを食べる機会はほとんどありませんでしたが(そもそも佐野ラーメン専門店が少ない)、ぐんぐんと名を馳せていった、とんでもなく凄い佐野ラーメンの名店の店主が、ゴルフ業界からの転身という異色の経歴を持つ田邉さん。

『麺屋ようすけ』田邉庸介店主

 かの有名な『せたが屋』店主の前島司さんのことを”兄貴”と慕うほど仲が良く、その他にも都内の有名なラーメン店主の方々との繋がりが深い田邉さんですが、一体どこでそんな繋がりが……!? 直接聞いてみると、ある答えが返ってきました。

田邉さん「元々テレビ番組で前島さんとご一緒して、社員研修などで食べに来てくれたのですが、最初はそれくらいで2人で遊んだりなどは特になかったんです。そんな中で兄貴がゴルフをすると聞いて、僕もゴルフをずっとやっていたので一緒にゴルフをするようになりました。

 ある日、“仲のいいラーメン屋を今度連れてくるよ!”と言ってくださって、ゴルフに『つけめんTETSU』創業者の小宮一哲さんを連れてきてくださって。それからというもの、沢山の店主さんなど紹介してくださったり、色んな場所に勉強にいかせてくれて…2人が僕を変えてくれました」

◆「釜玉中華そば ナポレオン軒 佐野店」誕生秘話

 そんな『つけめんTETSU』創業者の小宮一哲さんと『麺屋ようすけ』店主の田邉さんがタッグを組み、2023年5月に『釜玉中華そば ナポレオン軒 佐野店』がオープン。

『つけめんTETSU』創業者の小宮一哲さん(左)

 別店舗の店主同士がタッグを組むという斬新な取り組みですが、麺の配合の部分は田邉さんが、店舗の形作りをしていったのは小宮さんが共同で作り上げていったのだそう。

田邉さん「好みの麺の食感などが小宮さんとお互い似ていて。コロナ禍をきっかけに『こんな麺がいいよね』と小宮さんと2人でやり取りした中で出来上がったラーメンなんです。ちょっと麺の風合いがうちの麺の雰囲気がでていて、佐野ラーメンっぽいんですよ」

釜玉(小)(550円)。気軽に来れるように価格帯も下げたのだそう

もちもちの太麺とたっぷりの白髪ねぎ、絶妙な塩気が効いたタレがポイント。釜玉うどんの”ラーメン版”は、美味しくないわけがない!

 都内にも店舗がある『釜玉中華そば ナポレオン軒』さんですが、粉の配合は同じでも、都内の店舗と佐野店では打ち手が異なるため、室温やプレスの長さなど微妙な影響で食感などに違いが出てくるのだそう。

 その違いも店舗ごとの一つの味。ぜひ味わってみて頂きたいです。

『釜玉中華そば ナポレオン軒』の製麺機。朝打った麺を、打ち立てで頂けます

プレスして伸ばしていき、麺圧を均一にするのだそう

1度で約15人前の麺が出来上がる。もちもち麺誕生の瞬間!

 これまで幾多の困難に直面したであろう田邉さんが語る言葉はとても力強く、コロナ禍を経て自身の心境の変化も感じているのだそう。

田邉さん「どんな逆境も気が落ちたことはなくて、常に“楽しいな”って思えるんですよね。これまで”自分のお店が良くなるように”という思いに留まっていましたが、それが当たり前になってきて、佐野ラーメンの認知度を挙げたい、佐野への集客を増やしたいという思いに変わってきました」

 現在は5人のお弟子さんを抱え、2023年10月には4店舗目となる新店舗も控えているという『麺屋ようすけ』さん。新店舗では餃子工場も併設した大型店舗になるのだとか!

 ぜひ、田邉さんの手掛ける逸杯を食べに佐野へ足を運んでみてくださいね。

『麺屋ようすけ』店主の田邉さん(左)、筆者(右)

麺屋ようすけ 本店
栃木県佐野市田島町232
平日:11:00〜14:00、17:00〜21:00
土・日・祝日:11:00〜21:00
火曜休
http://www.menya-yousuke.com/
https://twitter.com/yousuke_honten

釜玉中華そば ナポレオン軒 佐野店
栃木県佐野市若宮下町6-15
平日:11:00〜14:00、17:00〜21:00
土・日・祝日:11:00〜21:00
火曜休
https://twitter.com/napo_sano

岡崎美玖(ラーメンインタビュアー)

ラーメンインタビュアー」として活動中。週3〜4日、年間200杯ほど、都内を中心に食べ歩いている。 好きな四字熟語は「自家製麺」。SNSでは「#39麺」ラーメン情報を発信中。
https://mikuokazaki.com/
https://twitter.com/aaamiku39

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