東京大学の研究チームは、怖いという気持ちを「共感」するときの脳の働きを、マウスを使って解明。前頭前野という脳領域に、自分と他者の感情の情報を、同時に合わせ持って表現する神経細胞が存在することを発見した。
東京大学の研究チームは、怖いという気持ちを「共感」するときの脳の働きを、マウスを使って解明。前頭前野という脳領域に、自分と他者の感情の情報を、同時に合わせ持って表現する神経細胞が存在することを発見した。 マウスを用いた観察恐怖行動実験では、電気ショックを与えられ、恐怖反応を示す他者マウスを見て、観察マウスも恐怖反応を示す。これまでの研究は、観察マウスがその場でうずくまって震える「すくみ行動」に着目して神経メカニズムを解析しており、すくみ行動以外の多様な行動の神経メカニズムについては不明な点が多かった。 研究チームはまず、観察恐怖行動中に観察マウスが示す複雑な行動を、客観的に自動分類する手法を確立。腹内側前頭前野(vmPFC)に光遺伝学的抑制(光を当てることで特定の神経細胞を興奮または抑制させる手法)を施した観察マウスの行動を解析し、vmPFCの神経入力は主に「逃避行動」の制御に関わることを明らかにした。 さらに、観察マウスのvmPFCの神経細胞が持つ情報を調べるため、観察恐怖行動実験中に脳の神経活動を観察できる「脳内内視鏡を用いたカルシウムイメージング」を実施。vmPFCの神経細胞は観察マウスの行動状態の情報を持っていること、他者マウスの電気ショックに応答する神経細胞がvmPFCに存在すること、さらに、両者が重なっていることを示した。 研究論文は、英国科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」のオンライン版に2023年7月3日付けで掲載された。(中條)