F1のDNAを市販車に
マクラーレンの歴史をクルマで振り返る
レース好き、特にF1好きにはビッグネームのマクラーレン。そんなマクラーレンが発足して今年で60年を迎える。60年前、ニュージーランド出身のレーサー、ブルース・マクラーレンがイギリスで立ち上げたレーシングチームが由来で、日本ではホンダと組んだ「マクラーレンホンダ」が有名だろう。
60年間、マクラーレンは志半ばで亡くなったブルースのDNAを受け継ぎ、自動車メーカーの「マクラーレン・オートモーティブ」として、最新のテクノロジーで武装したスーパーカーをリリースし続けている。前身である「マクラーレン・カーズ」の頃から「マクラーレンF1」やメルセデスとのコラボモデル「SLRマクラーレン」など自動車史に残る名車を登場させてきた。量産車メーカーではないので、ラインナップも多くはなく、現在はSUPERCAR、GT、ULTIMATEの3カテゴリーが存在し、SUPERCARには750シリーズ、765シリーズ、ARTURA(アルトゥーラ)など5モデル、GTには1モデル、ULTIMATEにはELVA、マクラーレンセナ(2モデル)、マクラーレン スピードテイルの4モデルが存在する。
そんなマクラーレンが六本木で60周年を記念したイベント「FOREVER FORWARD」を7月8~9日に六本木ヒルズの大屋根プラザで開催する。イベントに先がけて、プレス先行プレビューが行なわれたのでレポートしよう。
会場にはレアなスーパーカーも!
イベントの冒頭にはマクラーレン・オートモーディブのリージョナルディレクターであるPaul Harris氏が登壇し、来場者に「レーシングドライバーのブルース・マクラーレンがいなければ、今のマクラーレンはなかった。そうして迎えた60年の節目を、みなさんとフィジカルに祝えるのは大変うれしい」とあいさつした。その後、マクラーレンブランドアンバサダーのAdam Reeves氏も登場し、マクラーレンの歴史を写真とともに振り返った。
イベント詳細
開催日:2023年7月8~9日
時間:11~20時
場所:六本木ヒルズ 大屋根プラザ
展示車両:M6GT、MP4/4、F1、MP4-12C、GT、ARTURA
イベントではそのような歴史を実車ととに振り返れる展示が盛りだくさんなので、クルマ好きなら見逃せないだろう。
それでは会場に展示されていた歴史的名車たちを紹介しよう。MP4/5Bは残念ながら一般展示はされないようだ。
ブルース・マクラーレンの情熱の塊
マクラーレン M6GT
マクラーレンのロードカーの起源ともいえるクルマ。世界に4台しかないというプロトタイプカー。当時の最先端のレース技術が投入され、レース参戦も視野に入れていたが、ブルースの突然の事故死により会社はプロジェクト休止を余儀なくされ、4台を作ったのみでブルースが描いた夢は消えてしまった。
F1の技術をそのまま公道に!?
マクラーレンF1
デザイナーのゴードン・マレーが手がけたロードゴーイングカー。1992~1998年まで、こんなとんでもないクルマが売られていたのである。まず、運転席が真ん中にあり、後部座席が2座あるという3人乗りということに驚かされる。そして斜め上前方に開くディヘドラルドア。そして、市販車初のカーボン製シャシーと、明らかに普通ではない雰囲気が漂っている。生産台数はレーシングモデルなども含め106台と言われる。
F1マシンの名前が入った
MP4-12C
マクラーレンのF1マシンで使われる「MP4」が車名に入ったスーパーカー。2011~2014年前生産され、GT3マシンも作られた。日本でもSUPER GTのGT300クラスにMP4-12C GT3が参戦していたこともある。MP4-12Cは3.8LのV8ツインターボを搭載し、600馬力を発生。7速のデュアルクラッチトランスミッションで最高速度333km/hを叩き出すモンスターマシン。
1990年、セナプロ黄金時代
MP4/5B
1990年のF1でアイルトン・セナとゲルハルト・ベルガーが乗ったマシン。ホンダ製のV10エンジンを搭載し、セナは年間6勝を挙げてチャンピオンを獲得した。とくに鈴鹿でのセナとアラン・プロストの一騎打ちからの1コーナーで両者リタイア、そしてそのままセナのチャンピオン決定はいまだに日本人の記憶に残っていることだろう。
F1で16戦15勝を達成した
MP4/4(1998年ベルギーGP優勝車)
史上最も成功したフォーミュラカーと呼ばれる。ホンダの1500cc V6エンジンはフルブーストで1500馬力が出ていたと言われ(1ccあたり1馬力!)、16戦中15勝と、セナの初チャンピオンとマクラーレンのコンストラクターズタイトルをもたらした。この勝率は今なお破られることなくF1史上最高記録として、モータースポーツの歴史に燦然と輝いている。
長距離移動が楽なグランドツアラー
マクラーレン GT
スポーツモデルのSUPERCARと、サーキットユースのULTIMATEの中間のラインナップになるのが、この「GT」だ。マクラーレンのクルマは基本的に目を三角にして攻めまくる傾向にあるが、これはそういった競争の世界からはちょっと違う立ち位置にいる。快適性と乗り心地を最優先に考えられており、長距離を楽に速く快適に移動するビジネスエクスプレス的なモデルだ。かといって、速くないわけではなく、最高出力は620馬力、最高速度は327km/hとマクラーレンの一族であることを主張している。
マクラーレン流ハイブリッド
ARTURA
3LのV6ツインターボエンジンを搭載しつつ、モーターが組み合わさったハイブリッドモデル。同社は2025年までにSUPERCARシリーズをすべてハイブリッド化すると発表しており、その第1弾がこのARTURAになる。エンジン単体で585馬力、モーター単体で95馬力を発生する。ほかのハイブリッドモデルはフロントを駆動させるためにフロントにもモーターを搭載することが多いが、ARTURAはあえて搭載せずに駆動方式はMRを貫いている。