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悪性黒色腫の脳転移治療法を開発、幹細胞を利用=岡山大ら

2023年07月04日 08時08分更新

文● MIT Technology Review Japan

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岡山大学とハーバード大学の研究グループは、幹細胞を利用して悪性黒色腫の脳転移巣に腫瘍溶解ウイルスを運搬する技術を開発した。腫瘍溶解ウイルスは強い抗腫瘍効果から期待を集めているが、腫瘍に直接投与する局所投与のみの適応となっており、脳転移などの遠隔転移への効果は不明だった。

岡山大学とハーバード大学の研究グループは、幹細胞を利用して悪性黒色腫の脳転移巣に腫瘍溶解ウイルスを運搬する技術を開発した。腫瘍溶解ウイルスは強い抗腫瘍効果から期待を集めているが、腫瘍に直接投与する局所投与のみの適応となっており、脳転移などの遠隔転移への効果は不明だった。 今回の研究で腫瘍溶解ウイルスの運搬に利用した幹細胞は間葉系幹細胞と呼ぶもので、骨髄や脂肪細胞から採取できる。自己複製能や、さまざまな細胞への多分化能、組織再生能を備え、近年は腫瘍に薬剤などを運搬する能力や遺伝子操作が容易である点が特徴。 研究グループは悪性黒色腫の脳転移の中でも特に難治例である軟膜播種を起こしたモデルマウスを用意し、腫瘍溶解ウイルスを載せた間葉系幹細胞を髄腔内投与した。その結果、腫瘍溶解ウイルスが効率よく腫瘍まで届くことを確認した。 さらに、CRISPR/Cas9技術を利用して間葉系幹細胞の遺伝子を改変し、サイトカインや免疫チェックポイント阻害剤といった免疫活性薬を生成する能力を持ち、ウイルスの攻撃を受けても死滅しない間葉系幹細胞を作成した。治療効果を高めるために、先述の腫瘍溶解ウイルスを載せた幹細胞と合わせてこの幹細胞を髄腔内投与した結果、がん細胞を攻撃対象と認識する樹状細胞と、がん細胞を攻撃するTリンパ球を効率よく誘導することで抗腫瘍効果を発揮させることに成功した。腫瘍溶解ウイルスによる抗腫瘍効果と、免疫活性化による抗腫瘍効果の両方が得られたことになる。 研究成果は5月31日、サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)誌にオンライン掲載された。腫瘍溶解ウイルスの局所投与が困難な部位に発生したがんや、全身に転移したがんなど、現行の治療法では根治困難な症例への治療法となる可能性があるとしている。

(笹田)

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