情報通信研究機構(NICT)と理化学研究所の共同研究チームは、デオキシリボ核酸(DNA)を材料にして、世界最小のコイル状バネを設計し、細胞への“微小な力”の超高感度計測に成功した。
情報通信研究機構(NICT)と理化学研究所の共同研究チームは、デオキシリボ核酸(DNA)を材料にして、世界最小のコイル状バネを設計し、細胞への“微小な力”の超高感度計測に成功した。 生物が神経伝達物質のような化学分子や電気で互いに情報のやり取りをしていることはよく知られているが、近年になり、機械的な力を信号として情報のやり取りをしていることが分かってきた。だが、既存の計測技術では、微小な力の大きさや向きの時間的な変動を正確にとらえることができなかった。 研究チームは、DNAを材料にしてタンパク質サイズの世界最小のコイル状バネ(ナノスプリング)を設計。細胞とガラス基板の間に連結させて、細胞への微小な力学情報(大きさと向き)を、世界で初めてピコニュートン(10のマイナス12乗ニュートン)以下の精度で精密計測した。 さらに、ナノスプリングの伸展・短縮の向きの変化をナノメートル精度で精密に画像解析する手法も新たに開発。力の大きさと向きの時間的な変動を同時に計測して、1ピコニュートン以下のノイズレベルの微小な力も含めた、動的な変動を容易に検出することを可能にした。 この計測技術によって生物の力学情報処理メカニズムを解明するための研究が前進し、超省エネの情報処理システムを実現して、新しい原理のコンピュータの開発などにつながることが期待される。研究論文は、米国科学雑誌「ACSナノ(ACS Nano)」に2023年7月2日付けで掲載された。(中條)