高校野球のブラバン応援でおなじみの名門8校が集結! 阪神甲子園球場にひと足早い熱い夏が到来
2024年8月1日に開場100周年を迎える阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)。その記念事業の一環として、6月11日に高校生によるブランスバンドコンサート「甲子園ブラスバンドフェスティバル2023」が阪神甲子園球場で行われました。
春・夏と甲子園を沸かす高校球児ですが、そんな彼らをさらにドラマチックに演出する各校のブラスバンドの演奏はとても印象的。今回、甲子園常連校とも言える8校が阪神甲子園球場に集結し、純粋に応援曲を聞かせてくれるとあって開催前から注目されていたイベントです!
参加校は、実行委員会から招待を受けた智辯学園和歌山高等学校(和歌山県)、履正社高等学校(大阪府)、智辯学園高等学校(奈良県)、近江高等学校(滋賀県)、龍谷大学附属平安高等学校(京都府)、四條畷学園高等学校(大阪府)、尼崎市立尼崎高等学校(兵庫県)、習志野市立習志野高等学校(千葉県)の8校の吹奏楽部や応援団、マーチングバンド部。
当日は、朝から雨が降り続き開催が危ぶまれましたが、開場前には雨は止み、時間どおりに開場。「今後の天気次第では、イベントを中止する場合あり」という条件付きの開催となりましたが、高校野球ファンや家族連れなど多くの観客が集まり、高校生たちの演奏パフォーマンスに酔いしれました。高校球児だけでなく吹奏楽部にとっても夢の舞台・阪神甲子園球場で行われた「甲子園ブラスバンドフェスティバル2023」の様子をお届けします!
8000人の観客の前で総勢およそ800名の高校生による圧巻の合同演奏で開幕!
球場いっぱいにファンファーレが鳴り響き、「甲子園ブラスバンドフェスティバル2023」が開幕。オーロラビジョン下でファンファーレを披露したのは、尼崎市立尼崎高等学校吹奏楽部。第104回全国高等学校野球選手権大会の開会式・閉会式では、バックスクリーンで演奏するファンファーレ隊と入場行進、大会歌などを演奏する音楽隊としての参加経験があります。
オープニングは8校による合同演奏。1塁側と3塁側のアルプススタンドから「野球大会行進曲」と、夏の甲子園の大会歌として幅広い世代に知られている古関裕而作曲「栄冠は君に輝く」を演奏しました。
続いて、出場8校の各部長がバックネット前に集まり、「新型コロナウイルスの影響で、思うように応援ができない年もありました」とつらい時期を振り返りつつ、「熱い思いを込め、私たちの演奏で観客のみなさんにエールを送ります」と高等野球選手権大会の開会式を彷彿させる宣誓が行われました。
監督をやめてから初めて甲子園に来たという矢野さんは、高校生のオープニング演奏を聞いて「心が躍るとか、気持ちが熱くなる。そんな気持ちになった」。一方、解説の梅津有希子さんは「吹奏楽部や応援団、チアがグラウンドに降りて応援することはないのでとても新鮮」とこれから始まる各校のパフォーマンスに期待しているようでした。
魔曲「ジョックロック」、洋楽メドレー、あの美爆音など、各校の個性が光る応援曲が甲子園に鳴り響く
1. 智辯学園和歌山高等学校
トップバッターは、智辯学園和歌山高等学校。応援団による「阪神甲子園球場100周年を記念して、フレーフレー甲子園!」のエールから始まり、「アフリカンシンフォニー」、新魔曲としての呼び声も高い「シロクマ」「ミラクルショット」のほか、「ラシアンカウボーイ」「YAMATO」、高校野球界で魔曲として恐れられている「ジョックロック」「ファンファーレ」など強力な応援曲を演奏!
リズムを取る応援団の大太鼓、アップテンポの曲に合わせて「かっせかっせチベン」「いけいけチベン」「かっとばせー!かっとばせー!オーチベン」など試合さながらの大合唱が印象的だ。特に「ジョックロック」から「ファンファーレ」への流れは、最高に盛り上がりました。
顧問の酒越光覺先生は「初めて聞いた時はカッコイイ曲だなと思っていたが、こんなに有名になるとは思っていなかった」「この曲には力があるので、演奏するタイミングはさまざま。チャンスを呼び起こしたり、大きくしたり。ただ、共通点としては、スタンドの思いを選手たちに届けるために使う曲」だと、20数年前から演奏するようになったという「ジョックロック」について話してくれました。
2.履正社高等学校
次は、2019年の夏の甲子園を制した履正社高等学校が登場。OBである東京ヤクルトスワローズの「山田哲人」選手のテーマ曲のほか、新旧の流行曲を盛り込んだ「パラダイス銀河」「チグハグ」「可愛くてごめん」「大阪LOVER」「第ゼロ感」「ダイナミック琉球」「パワプロ」「モンキーターン」など16曲を披露しました。野球部からのリクエストもあり、最近の流行曲を取り入れているそうです。
「かっとばせ~、りせい、りせい、りせい。オ~」などの掛け声を曲の間にはさみ、テンポのいいリズムと演奏に観客も手拍子で参加。会場が一体になりノリノリに!
顧問の林選也先生は、吹奏楽部の活動としては「コンクールやコンテストだけでなく、地域のみなさんとの繋がりを大事にしており、毎月の服部緑地公園での演奏会など学校内外のさまざまな行事にも積極的に参加しています。インスタグラムでもコンサートのお知らせや部の活動を発信しているので、ぜひチェックしてほしい」と観客のみなさんにアピールしていました。
3.智弁学園高等学校
オリジナルの曲やアレンジが多く詰め込まれた智辯学園の野球応援曲。先に演奏した智辯学園和歌山高等学校と同じ「アフリカン」「ジョックロック」「ヒット(一番)」のほか、「三番」「天舞(夢未来)」「K・K(君の瞳に恋している)」「七番」「応援歌」などを力強く演奏しました。注目ポイントは「ジョックロック」から「ヒット(一番)」(※智辯学園和歌山高等学校ではファンファーレ)へと続くこの2曲。智辯学園和歌山高等学校との演奏の違いはもちろんだが、2021年の夏の決勝、智辯対決を思い出した人も多かったのではないでしょうか。
参加していた応援団とチアリーディング部も素晴らしいパフォーマンスを見せつけ、「カッコよかった。すごい迫力だった」とゲストの矢野さんも興奮気味!
兄弟校の智辯学園和歌山高等学校とは、一緒に応援していた時期があったことから「アフリカン(シンフォニー)」「ジョックロック」「ヒット(三番)=ファンファーレ」など共通の曲を持っているそうです。
それぞれ微妙に異なるそうですが魔曲と呼ばれる「ジョックロック」に関しては「徹底的にテンポが異なり、智辯学園和歌山高等学校に比べ、智辯学園はゆったりめなのが特徴」と顧問の木山竜志先生。また、岡本和真選手(読売ジャイアンツ)の母校でもある智辯学園のグラウンドには、打球が飛びすぎてゴルフの打ちっぱなし場のように巨大な、岡本ネットと呼ばれる外野ネットの話も飛び出しました。
4.近江高等学校
2022年の春は準優勝、夏はベスト4と、近江高校の活躍は記憶に新しいところ。今回の演奏では「Happy」「HandClap」「Bang Bang」「Runaway Baby」「Hot Limit」「The Final Countdown」「近江マーチ(アルプス一万尺)」「Rocky Point Holiday」「Fireball」と甲子園での熱い試合を思い出す応援メドレーを披露。洋楽を中心に、滋賀県らしさを出すため滋賀出身のアーティスト西川貴教さんの楽曲を取り入れた、近江サウンドが炸裂しました。
近江高校といえば人気の「Fireball」。「今日の主役はどこですか?近江高校!」「チャンスをつかむのはどこですか?近江高校!」のコール&レスポンスは観客も巻き込んで、大いに盛り上がりました。
ほかの学校とかぶらないようにと、2018年から洋楽中心の楽曲へとリニューアルした近江高校。なかでもチャンステーマ「Fireball」は、野球部が考案したという斬新なコール&レスポンス形式が人気を呼んでいます。顧問の樋口心先生は、歌詞を見た時に「なんじゃこりゃ。流行るわけがない」と思ったそうですが、耳に残るフレーズが思いのほか話題となり、他校が真似するようになったと苦笑い。また、西川貴教さんとは、楽曲を取り入れたおかげで交流が生まれたそうです。
5.龍谷大学附属平安高等学校
2022年度の吹奏楽コンクール・マーチングコンテストともに京都府代表として関西大会に出場した龍谷大学附属平安高等学校が登場。顧問の林晃先生をはじめとする先生たちが作曲した「HEIAN」「さわやか1・3・4・5・7」「いかついやつ」「爆撃」「ドカーン!」、そして、ファンの間で怪しいボレロと親しまれている「怪しい曲」、「ヒット」「得点」「空紺碧」など、ネーミングもユニークなHEIANオリジナル応援曲を演奏しました。
演奏とともにパネルを出して応援スタイルのレクチャーや曲目を紹介。マーチ風の「さわやか」、アップテンポな「いかついやつ」が続いた後、重低音のチャンステーマ「怪しい曲」が流れると、何かが起こりそうな不気味な迫力に空気が一変。なかなかの威圧感です!
「PL学園や天理高校など関西の強豪校には、ここというときのオリジナル曲があるので、うちも」ということから、独自の応援曲にこだわるようになったという林晃先生。特に人気の「怪しい曲」は、もともとタイトルがなく、新聞記者から名前をつけて欲しいと言われ、怪しい曲なので「怪しい曲」と、とっさに付けたとネーミング秘話を話してくれました。
また、「怪しい曲」を応援曲として取り入れている学校について「使っていただけるのはありがたいのですが、本校のオリジナルですので、ぜひ他校でもオリジナルを書いていただいて、使用をやめていただきたい(笑)」とやんわりと忠告されていました。
6.四條畷学園高等学校
全国大会で2年連続金賞を受賞している四條畷学園高等学校のマーチングバンド部。同校には野球部はないが、2023年春の選抜大会で高知高等学校の友情演奏をし、「すごい!」とネットで話題に。今回は、同大会でも演奏したレディー・ガガの「Poker Face」、「Born This way」「コンバットマーチ」「Red Warriors」「英雄」などを披露。レベルの高いパフォーマンスで観客を魅了しました。
マーチングバンド部ならではのフォーメーションを組んだドリル演奏、軽快な打楽器のリズム、華麗なフラッグさばきに釘付け。衣装もかっこいい!
普段はパーカッショの指導をしているという指揮者の今川直紀先生。10年ほど前から高知高校吹奏楽部の打楽器の指導に行っている縁から、2023年春の選抜大会で高知高等学校の友情応援をすることになったそうです。顧問の志賀輝久先生は「野球部のない学校なので、まさか甲子園で演奏することになるとは夢にも思わなかった」「音がどこまでも飛んで行く感覚が最高だった」と当時の感想を述べられていました。
マーチングバンド部では、マーチングホルン、マーチングチューバ、マーチングユーフォニアムのように前を向いている楽器を使用。野球応援にとても向いている楽器だそうです。
7.尼崎市立尼崎高等学校
オープニングでファンファーレを披露した尼崎市立尼崎高等学校が登場。吹奏楽部の総監督が沖縄県出身という縁で40年以上も甲子園のアルプススタンドで沖縄代表の友情応援をしています。
沖縄といえばの「ハイサイおじさん」をはじめ、「ロックユー We will Rock You」「HIT」「さくらんぼ」「サンバ」「得点」「六甲おろし」「サウスポー」「トリトン」「狙い撃ち」などを演奏し、幅広い年齢が知っている安定の応援曲を繰り広げました。プログラムにはなかった「六甲おろし」のサプライズ演奏には、会場も大拍手!
コロナ禍で吹奏楽部の応援ができなかった期間、日本高等学校野球連盟からの依頼で、応援曲20曲を録音し音源を提供。春と夏の試合で数多くの学校が、尼崎市立尼崎高等学校吹奏楽部の応援曲を使用しました。
地元、尼崎市立尼崎高等学校の演奏に、ゲストの矢野さんは「知っている曲ばかりでうれしい」「六甲おろしまで演奏してもらい、ありがとうございます」と喜んでいました。顧問で指揮者の岩山悦志先生は「甲子園ということもあり、六甲おろしは入れておかないと」と思い、急遽、プログラムに追加したそうです。
8.習志野市立習志野高等学校
ラストを飾るのは、唯一、関東から参加した習志野市立習志野高等学校吹奏楽部。全日本吹奏楽コンクール、全日本マーチングコンテストでも常連で、2022年度は2大会で金賞を受賞した名門校で、甲子園アルプススタンドからの応援でも一際目立つ「美爆音」で有名です。
今回は「Yea Alabama!」「エスパニア・カーニ」「スパニッシュ・フィーバー」「ハーリー・アップ(スローダウン)」「Beautiful Smail」「Paradise Has NO BORDER」「星空のディスタンス」「レッツゴー習志野」「ヒットファンファーレ」「得点(ホームランファンファーレ)」「きらっとサンバ」を演奏。予定よりおよそ50名少ないおよそ120名での演奏でしたが、それでも甲子園球場が震えるような強烈な爆音はやっぱりすごい!
「スポーツ応援は、選手と応援する側がその場で一体になれる」「選手のために演奏することで、学ぶ事がたくさんあるので、スポーツ応援は最優先している」という顧問の石津谷治法先生。なかでも野球応援には力を入れていて、「選手たちが頑張る姿を見て、さらに一生懸命練習するようになった」と言います。また、「今回のイベントを多くの人に見てもらって、吹奏楽に興味を持ってもらいたい」ともお話されていました。
青空の下でのフィナーレ!
フィナーレは、総勢およそ800名による高校野球応援の定番「アフリカン シンフォニー」と、阪神甲子園球場100周年記念マンガコラボムービーのテーマ曲「KOSHIEN FOREVER」を演奏。いつもはグラウンドで頑張る選手たちを鼓舞し、スタンドとの一体感を作り出す演奏で活躍するブラスバンド。そんな彼らを主役にした「甲子園ブラスバンドフェスティバル2023」が終了。後半からは晴れ間も広がり、とてもいい演奏会になりました。
今回、阪神甲子園球場で初の試みとなった「甲子園ブラスバンドフェスティバル2023」。高校生たちの熱い演奏に、観客たちがパワーをもらったそんなイベントでした。来年も再来年もまた開催されたらいいなと思いながら球場を後にした人が多かったのではないでしょうか。