幻のコロッケを食べるなら
今夜でなければダメなんだ
コロッケといえば、学校帰りのお肉屋さんで買い食いをした思い出がある人も多いだろう。なんとなく、コロッケといえばオヤツというイメージが筆者にはあった。食べたいときにお手頃価格ですぐに食べられる、それがコロッケだった。
だが世の中にはまだ知らないことがたくさんある。ある日、筆者のクルマ仲間でありIT系企業社長の西田陽介さんから「納期35年待ちのコロッケが届いたんですが、みんなで食べませんか?」というお誘いがあった。え? 35年待ちのコロッケってなにそれ!? と、うろたえる筆者。調べてみると兵庫県の神戸牛にこだわるミート&デリカ「旭屋」さんが販売している神戸ビーフコロッケ「極み」とのこと。それにしても、35年待ちって……小学生の頃に頼んだとかじゃないですよね? 「頼んだのは10年前ですね。今頼むと35年待ちってことです。で、10年前に頼んだのが先日届いたんです」と西田さん。
なんでも10年前にこのコロッケのウワサを聞きつけ、そのときに勢いで50個頼んで忘れていたそう。そして最近になって「10年前の注文なんですが、間違いありませんか?」という連絡が5月に来て思い出し、さすがに50個は1家族で食べきれないので、知り合いを呼んでみんなで食事会ということになったそうだ。
そもそもなんで35年待ちなのか?
まず35年待ちコロッケこと、神戸ビーフコロッケ「極み」の説明をすると、ひとつひとつ手作りのため工数がかかり、1日200個の限定販売なこともあって、2016年の時点で13~14年待ちになったという。さすがに一時販売を停止していたが、しばらくして再開。今年2023年には35年待ちになったということだ。値段は西田さんが購入した10年前は1個273円(税込)だったが、現在は原材料の高騰にともない5個2700円、1個約540円とほぼ倍の値段になっている。素材である神戸牛も以前より倍の価格になっているようで、致し方ないところだ。
肉専門店でシェフが揚げたコロッケを食す!
コロッケ試食会の会場となったのは六本木一丁目の「肉屋 格之進 F」。黒毛和牛の熟成肉を取り扱うお店だ。お店のオーナーの肉おじさんこと千葉祐士(ちば ますお)さんと西田さんが友達だったことから、貸し切りでのコロッケパーティーが実現したというわけ。なお、千葉さんは日本最大級の肉の祭典「肉フェス」で4回連続総合優勝をしているという、肉のプロだ。
冷凍で届いたコロッケを格之進のシェフが揚げていく。この日は昼食を早めに食べたこともあって、すでに空腹が限界にきていた。この状態だと何を食べても美味しく感じるのは間違いない。しかし、カラっと揚がったコロッケを食べたところ……。
一見何の変哲もないコロッケが
神戸牛が加わって次のステージへ
うんまーーーーーーー! これは空腹というスパイスではない。ホクホクのジャガイモ(レッドアンデス)とゴロゴロ入った神戸牛の味のおかげだ。試食会にはいろんな業界の人が40人ほど参加しており、筆者の知り合いは西田さんしかいなかったのでぼっち参戦でどうしたものかと思っていたが、そんな不安はどこへやら。思わず隣の人(初対面)に「マジ美味いッスね!」と声をかけてしまったほど。この神戸牛は旭屋のサイトによるとA5等級で3歳雌牛の神戸牛のみを使っているという。グルメではない筆者はどのくらいスゴいのかピンとこなかったが、食べて納得。コロッケに入ったサイコロ状の肉だけでもとても美味しい。プロが調理しただけあって、揚げ加減も絶妙。熱くなりすぎず、かといって温くもない。口の中をヤケドすることなくジャガイモと神戸牛の甘みを堪能できた。
ちなみに、このあとは格之進コース料理が出されて、お腹は超絶パンパンに。最後に千葉さんが極みコロッケを分析してくれた。
生きているうちにもう1度食べられる?
若い人は今から注文入れるべし!
千葉さんいわく「重さを量ったら110gだった。そのうち神戸牛は40g。コロッケの中の肉の比率は一般的には1/10程度なんです。あきらかに肉の比率がおかしいですね。273円で売っていたら確実に100円以上の赤字が出ているはずです。私ならこの売り方はしないですね(笑)」と語った。手作りなこともあって、非常に手間暇がかかった採算度外視のコロッケのようだ。当然これだけでは商売にならないので、コロッケを見に来た人が他の商品を購入することで帳尻を合わせているのだろう。
そんなありがたい話を聞きながら、今から注文したとして自分が生きているうちに届くだろうかと余計な心配をしてしまった。
最近、いろんなものの納期が延びているが(とくにクルマとか)、その中でも群を抜いて長い納期を誇る旭屋の神戸ビーフコロッケ「極み」。どなたかまた筆者に食べさせてください。35年後にまた会いましょう!