AIと二人だけで知恵の壁打ち
では、「超人類」とはなにか。
孫会長兼社長は、「人類とは、地球上で最も優れた頭脳を持つ動物であったが、10年以内に、その状況が一変する。シンギュラリティが訪れる」とし、次のように説明する。
「かつては、巨大な電卓が、コンピュータだと位置づけられ、計算マシンとして活用されていた。ここに地球上の様々な情報が蓄積されるようになり、計算マシンから記憶マシンに進化した。次に、自分が必要な情報を検索したいというニーズが生まれ、コンピュータは検索マシンに進化し、それらのデータをもとにGPTなどが生まれ、AIが広がり、いまは推論マシンへと進化して、人間しかできなかった創造性も持つようになった」と、まずは、コンピュータの歴史を振り返る。
孫会長兼社長も、自分のアイデアをもとに、「毎日、GPTと2人で」(孫会長兼社長)、対話をしたり、ディベートしたり、ブレーンストーミングしたりといった「知恵の壁打ち」をしているという。
「私のアイデアに対して、GPTは、それは非現実的であり、膨大なコンピューティングリソースが必要であるため実現できないと指摘された。そこで解決策を提示すると、今度は次の課題を提示する。なにくそと思って言い返し、そのやりとりを10数回繰り返したら、実現可能なアイデアであるとの答えが出た。GPTに勝った」と笑う。
その上で、「推論マシンとしてのAIは底知れない力を持っている。GPT-3.5は大学入試に合格できないレベルだったが、GPT-4では米国の司法試験の上位10%レベルで合格ができ、医師国家試験も上位で合格できる。読解、数学、生物学、統計学、心理学も上位で合格できる。近い将来には全科目で上位1%に入るだろう。さらに、数年後には、すべての科目で、絶対的レベルで1位になるはずだ。これは時間の問題である。どんな天才でも、全方位ではトップになれない」とする。
だが、その進化はそこで止まらない。それが、超人類につながる。
「今後数年は、人とAIとどちらが、知恵があるのかという議論が残るだろう。だが コンピューティングは進化していく。全人類の叡智のすべての総和の1万倍ぐらいにはなるだろう。しかも、数10年以内にはそれがやってくる。armのロードマップで計算すると、それぐらいの勢いで進化することがわかる。AIは自ら進化し、自ら増殖する。AIが、超知性を持ったロボットを、自ら設計し、ロボットがロボットを生産するようになる。それは100本の手を持ったロボットかもしれないし、空を飛ぶロボットかもしれない。様々な形や大きさのロボットが生まれ、超知性とつながっている。AIには、全知だけでなく、全能という要素が加わることになる」とする。そして、「進化の速度は、ものすごい勢いが続き、人類を遥かに超えた超人類といえる生命体が誕生することになる」と予測する。
それが、孫会長兼社長の発明テーマの大半を占める「超人類」というわけだ。
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