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東京ヴェルディが設立した「Verdy Sports Innovation Hub」とは

2023年07月12日 06時00分更新

文● 中田ボンベ@dcp 編集● ASCII STARTUP

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 2023年4月4日、東京ヴェルディが「Verdy Sports Innovation Hub」の設立を発表した。東京ヴェルディがステークホルダーと協力し、スポーツ現場でのイノベーション創出を目指す、という取り組みだ。今回は、「Verdy Sports Innovation Hub」設立の背景や、すでにスタートしている取り組みを紹介する。

「Verdy Sports Innovation Hub」とは

「Verdy Sports Innovation Hub」は、東京ヴェルディが持つデータや知見を基に、企業や大学、専門家と協力し、スポーツの新しいイノベーションを生み出すエコシステム(複数の企業が協力し共存共栄していく仕組み)だ。上記の図のように、同取り組みは多様なステークホルダーからの「INPUT」の場を構築し、議論と研究を重ねることで新しいイノベーションを生み出し、スポーツにおける課題解決、人材育成での活用を目指す。

「Verdy Sports Innovation Hub」では、「心」、「技」、「体」、「知」の4つのテーマを「プロフェッショナル人材の育成で重視するもの」として掲げている。4つテーマごとに、全部で15のサブテーマが設定されており、これらが同取り組みの研究対象だ。

 研究結果は、クラブの育成分野で活用されるほか、プロジェクトに関わる人すべてに公開することで、さらなるブラッシュアップも図る。また、サッカーだけでなく、他のスポーツや、スポーツ以外での社会課題の解決にも貢献する。

CBC社との協業でデータの可視化に取り組む

 まだ設立間もない「Verdy Sports Innovation Hub」だが、すでに大手商社のCBCとの協業で、「キックモーションやボールスピードの解析」に取り組んでいる。

 CBCと東京ヴェルディの協業では、スポーツのDX化事業を推進しており、特に自由視点やAI分析カメラなどを活用した「映像DX」に注力している。例えば、選手のキックモーション(スイング速度やインパクト効率など)やボールスピードなどを測定し、解析するシステムのサービス展開が挙げられる。

 東京ヴェルディでは、同システムを用い、トップチームや女子チーム、アカデミーの生徒など数百人規模でデータを取得。ここで得たデータや数値をチームから監督、選手へフィードバックし、育成年代から技術の向上や強化、フォームの見直しによるコンディション改善を図っている。

 また、取得データを用いた科学的な共同研究や、CBC社のAI分析カメラを用いた取り組みについても検討されている。サッカー選手だけでなく、他分野のアスリートへの活用など、日本スポーツ界の競技力向上につながるだろう。

「Verdy Sports Innovation Hub」設立の背景

「Verdy Sports Innovation Hub」設立の背景には、「社会的価値観のパラダイムシフト」が挙げられるという。スポーツ自体の在り方やスポーツクラブに求められるものが大きく変化。東京ヴェルディの代表取締役副社長の森本譲二氏は「コロナ禍の影響もあり、これまでのようなスポーツを取り巻く広告モデルが限界を迎えつつある」と話す。そのため、従来とは異なる新たな取り組みを推進する必要性があったという。

 そこでテーマとして挙がったのが「人材育成」だ。東京ヴェルディではこれまでも人材育成に力を入れてきたが、東京ヴェルディが考えるプロフェッショナル像を再定義する中で、クラブ外部から異なる価値観や知見を学び、取り入れる必要があることを再認識した。そこで、東京ヴェルディが持つメソッドを軸に、プロフェッショナル人材の育成手法の研究・開発する拠点として、「Verdy Sports Innovation Hub」が生まれた。

 加えて、クライアントから「社会的なインパクト、新しいチャレンジをするきっかけ、共に研究できる環境を作ってほしい」という声が多かったことも、「Verdy Sports Innovation Hub」設立の理由のひとつ。森本氏も「クラブと企業が共に何ができるのかを、分かりやすく体系立てて発信する必要がある」と感じたという。

 今回、「Verdy Sports Innovation Hub」という、外部との提携、研究、取り組みをきちんと体系立てて発信するプラットフォームを作ったことで、「東京ヴェルディと一緒に何ができるのか」を分かりやすく発信することにもつながった。実際に、企業からの反響も大きく、すでに協業しているCBC社など、新しいテクノロジーを多くの人に知ってもらいたいという考えを持つ企業からは特に注目されたという。

 まだスタートして間もない取り組みではあるが、森本氏によると「すでに複数の企業と協業についての話を進めている」とのことで、スポーツ分野以外の企業との研究も視野に入れているという。

 サッカークラブの名門である東京ヴェルディが設立した「Verdy Sports Innovation Hub」。今後どのような取り組みが生まれ、サッカー界、さらにはスポーツ界全体をどのように変えていくのか注目したい。

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