PCやスマホなど多彩な機器でも楽しめるDTS、次の挑戦はクルマの世界
イベントの冒頭で、dts japanの西村明高取締役は、1990年に松下電器産業(現パナソニック)がMCA(現ユニバーサル)を買収したことに言及。その後、ユニバーサル・スタジオ内に設立されたHDテレシネセンターにおいて、AVコーデックやオーサリング技術の研究が始まり、MCAとともに11種類の共同プロジェクトを開始したという。DTSの技術はその中から生まれ、DTSの音声フォーマットを採用したスティーブン・スピルバーグ監督の『ジュラシック・パーク』が公開された。当時、松下にいた西村氏はそのことを鮮明に覚えているという。
その後、西村氏は電子番組表のGガイドなどを手掛けるジェムスターに転職した。ジェムスターはコンテンツ保護技術のマクロビジョンに買収され、マクロビジョンは社名をRoviに変更。さらにRoviはSTBやモバイルコンテンツ向けの映像配信を手掛けるTiVoを買収し、社名をTiVoに変更。このTivoが2020年、DTSなどを傘下に収めるXperiに吸収されたことを受け、現職に就いたという。こうした経緯を説明しつつ「かつて横目で見ていたDTSの技術を自分が担当することに運命めいたものを感じている」とコメントし、DTSフォーマットの拡大に努めていきたいと語った。
加えて、DTSはゲーミング用途にも適したHeadphone:Xなど、モバイル、携帯電話、タブレット、PCなどへの展開にも注力している。さらに、数年後に到来する自動運転の時代を見すえた展開としてクルマの世界におけるDTSがある。そのための技術として「DTS Auto Sense」(搭乗者の認識)、「DTS Auto Stage」(HDラジオのデジタル化、音楽だけでなくビデオのサービスも提供)を提供しており、これらは「BMW 5シリーズ」で採用される計画があることも発表されている。自動車の開発には時間がかかるため、この技術が採用された自動車が世に出るのは早くても2025~2027年ごろのタイミングになるとするが、電気自動車や自動運転というキーワードが重視される中、車内のエンターテインメントはすべてのクルマメーカーが注目している分野であり、2023年中には大手メーカーの大半がビデオ再生のためのパートナーを決めるだろうとしている。
電気自動車では充電時間中の時間を楽しむインフォテインメントも求められている。また車内のエンターテインメントでは、誰が見ているか、今までにどんなコンテンツを見たか、どこへ行くか、そのためにどれだけ時間があるかといった情報を知り、それに適したコンテンツを推薦する仕組みも求められる。DTSはこの分野に積極的だ。クルマが動く映画館とも言えるぐらい、リッチな映像・音楽の体験を提供する場所になることもそう遠くはないのかもしれない。