ジェネレーティブAIも動画エンコードも快適!水冷ノートPCの実力をチェック

文●加藤勝明(KTU) 編集●ジサトラハッチ/ASCII

提供: マウスコンピューター

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水冷ではCPUとGPUのパワーバランスが変わる

 では最後に動作中の熱やクロックといった側面に注目してみよう。水冷ユニットがCPUやGPUの発熱をどれだけ抑えられるのか調べてみた。

 ここでの検証は、前掲のMedia Encoder 2023におけるエンコードを15分程度連続で回し、その際のCPUやGPUの状態を「HWiNFO Pro」で追跡するというものだ。室温は約27℃となる。

空冷時のCPU/GPU温度推移。CPU温度はCPUパッケージ温度を追跡した(以下同様)

水冷40%設定時のCPU/GPU温度推移

水冷60%設定時のCPU/GPU温度推移

 空冷時の温度が3パターン中最も高いのは予想通り。特にCPU温度は一瞬ではあるが100℃に迫る時もあり、GPUも80℃あたりまで上昇を続けている。ノートPC、DAIV N6-I9G90BK-Aのようにハイパワーながら薄型設計のノートらしい温度の挙動といえるだろう。空冷で運用することも不可能ではないが、これで真夏の暑い室内で使うことを考えると少々不安ではある。

 しかし、水冷にすると特にGPU温度が劇的に下がり、最大60℃あたりで頭打ちになる。CPUはGPUほど温度が下がらないが、それでも温度変動のボトムラインが空冷時よりも10℃~15℃程度下がっている。水冷ユニットのファン回転数を上げると、GPUもGPUも温度は下がるが、空冷と水冷の差に比べたら差は小さい。

空冷時のCPU/GPUクロック推移。CPUクロックは全コアの平均値を追跡した(以下同様)

水冷40%設定時のCPU/GPUクロック推移

水冷60%設定時のCPU/GPUクロック推移

 水冷と空冷で温度があれだけ違うのだから、クロックにも相応の違いがあるだろう……ということでクロックも追跡してみた。空冷/水冷40%/水冷60%の3通りの設定を比較して分かるのは、CPUもGPUも温度が高かった空冷設定でもクロックは劇的に下がる訳ではないということだ。GPUクロックは空冷時でも2.4GHz近辺で頭打ちになり、時々ガクッとさがる程度。

 一方CPUクロックは常に激しく上下しているが、水冷だからといって高クロックで安定という訳ではない。上下に乱高下するのはMedia Encoder 2023のエンコード処理に由来する(CPU負荷が常に変動する)こともあるが、それをおいても空冷と水冷で乱高下の差はないように見える。

 それどころかCPUクロックの変動に注目した場合、空冷60%の方が40%よりも激しく変動しているように見える。これを解き明かすために、エンコード中のCPU Package PowerとGPU Powerも追跡してみた。

空冷時のCPU Package Power/GPU Power推移

水冷40%設定時のCPU Package Power/GPU Power推移

水冷60%設定時のCPU Package Power/GPU Power推移

 まずCPU Package Powerに注目すると、空冷時よりも水冷時の方が明らかに高い。一方GPU Powerは空冷時が最も高く(150W前後)、逆に水冷時は120W程度に下がった。つまりDAIV N6-I9G90BK-Aの冷却設計は、空冷時は極力GPUにパワーを割り当て、水冷ユニット装着時はCPUにもより大きなパワーを割り当てるようにチューニングされている、ということになる。

 さらに言えば水冷40%時のGPU Powerは水冷60%時のGPU Powerよりも落ち込む頻度が高いが、CPU Package Powerは水冷40%の方が(なんとなく)水位グラフの山が高い位置にある。つまり水冷60%設定にして熱的余裕が出たら、それをよりGPU側に割り当てるようなセッティングになっていると考えられる。

 水冷60%の方がCPUクロックが低くなっているように見えたのは、これに原因があるようだ。さらに言えば、Media Encoder 2023検証でハードウェアエンコード時に限って空冷が水冷より短時間で終了したのは、GPU Powerが関係しているといえる。ただもっと長尺な動画を扱った場合、水冷の方が早くなる可能性も考えられる。

 ただ欲を言えば、水冷でもCPU Package Powerを抑えてGPUに最大パワーを割り当てられるようにするとか、逆にCPU側に最大パワーを割り当てられるようにするような仕組みが欲しかった。ゲーミング向けならばGPUパワーを重視する設計でもあまり問題はないが、クリエイター向けPCだとCPUに全振りしたいシーンも出てくる。これを実現するにはハード・ソフトの両面から詰めていく必要があると思われるため、次世代DAIVでの改善を期待したい。