このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

Apple Arcadeなぜ強い ゲーム開発者語る

2023年05月18日 11時30分更新

文● ジサトラハッチ 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

『ソリティ馬 Ride On!』のディレクターを務めるゲームフリークの田谷正夫氏

Apple Arcadeなら
売り切りゲームのようにゲームを楽しんでもらえる

 『ソリティ馬 Ride On!』は、「ポケットモンスター」シリーズの開発で知られるゲームフリークが、かつてNintendo 3DSのダウンロード用ゲームとしてリリースした『ソリティ馬』をベースとしたゲーム。

 1982年頃、ゲームフリークはまだ株式会社ではなく、現代表取締役社長の田尻智氏が作った同人誌の名前だった。まだ、ゲームがメディアにも認識されず、専門メディアもない時代に、当時のゲーム好きがだんだんと集まって後にサークルになったという。

 その後、ゲームフリークはゲーム好きとしてゲームを作ってみたいという素朴な想いから『クインティ』を開発。会社でもないのでゲームを自主開発するのは、当時としては珍しいことだったが、販売ができなかったため、その時のナムコ(現バンダイナムコ)に販売してもらい、そのロイヤリティーを元に株式会社化した。

 ゲームフリークは、1996年には『ポケットモンスター 赤・緑』を田尻氏が企画、開発して世界中で大ヒットした。田谷氏はそうした中、プログラミングを勉強していく上で、仕事にしてしまえば有効だろうと考え、ゲームフリークの募集を見て入社に至ったという。

 ゲームフリークはしばらくポケットモンスターの開発に注力していたが、2010年代頃からポケットモンスター以外のオリジナルタイトルも継続的にリリースしていくという会社方針に変わり、田谷氏は『ソリティ馬』の開発にも携わったという。

 『ソリティ馬』は、一緒に作った会社の同僚からソリティアを教えてもらったことを契機に、たまたまその同僚と自分が競馬好きだったとのことでスタート。また、画面をタップするだけでカードがポンポン気持ちよく取り除ける心地よさと、シンプルながら奥深く、攻略のしがいがあるゲーム性が気に入り、ソリティアと競馬が組み合わさって生まれたという。

『ソリティ馬 Ride On!』はJRAにも許可を取り、実際の競馬のレースに出走して遊べる仕様になっている。オープン戦から始まり、勝利するごとにGIII、GII、GIといった重賞にも挑戦できるようになる

商店ではレースで役立つアイテムが、レースに勝った賞金で購入できる

 Nintendo 3DSでリリースした『ソリティ馬』は、日本ゲーム大賞の特別賞をもらうほどヒットしたが、その勢いのまま作って2014年にリリースしたスマホアプリ版は、1年でサービスが終了する。思うように売り上げが上がらなかった理由は、Free To Playのノウハウが足らなかったこと。ゲーム構造自体をしっかりとFree To Play用に作り替える必要があったと思っているとのことだが、ゲームの遊び部分はスマホ版のユーザーも満足してもらっていた。

レースでは、まずスタートを決めるため、「START!」の文字の獲得を目指す短いソリティアをプレイ

その後、レース中に2度ソリティアを行ない、カードを全部取り除き「PERFECT」を取るとウマのスタミナを抑えられ、より多くの気合が上がる

道中、ウマの位置取りを変える際に難易度が変化。より難易度が高い方が得られる効果が高くなる

 その後、アップルがサブスクを始めると話題になっていた。このサブスクの形態だったら、Free To Playようにゲームを作り替えなくても、コンシューマーの売り切りと近い形で楽しんでもらえるのではないかと考え、Apple Arcade用での開発を決めたようだ。

 『ソリティ馬 Ride On!』は、Apple Arcadeで間もなくリリースすると、2週間くらい前に広報したところ、Twitterのトレンド入りを果たす。その後Apple Arcadeのランキングで1位も獲得する。

 それは、アップルの発信力やApple Arcadeにリリースされるという話題性の結果だと思うが、長いこと待っていたユーザーがいたことに胸を熱くしたと、田谷氏は語った。

 『ソリティ馬 Ride On!』では、サブスクで長く遊んでもらえるように、バランスの改善や不具合の解消をするなど工夫をしている。さらに、新しい「おウマさん」を追加して、新たなチャレンジクエストみたいなものをクリアすると、そのウマが得られるというようなアップデートも実施していて、今後もしばらく継続する予定とのこと。さらに、3DSにはなかった新たな遊び方も追加するよう考えているようなので、ユーザーの方には期待して待っていて欲しい、と語った。

 ちなみに、『ソリティ馬 Ride On!』のダウンロード数は、リリースから半年を待たずして、3DS版のダウンロード数を超えたという。3DS版ではしばらく言語が日本語だけで、その後英語のみ対応していたが、『ソリティ馬 Ride On!』は、最初から日本語、英語だけでなくヨーロッパの主要言語に対応。さらにアップデートで10言語以上に対応している。

 そうした条件の違いから、プラットフォームとして単純に比較はできないとしたうえで、田谷氏は世界中の多くの人にゲームを楽しんでもらえていることが、単純に嬉しくApple Arcade向けにゲームをリリースすることに挑戦して良かったと思っているそうだ。

Apple Arcadeはシンプルで奥深いゲームも
たくさん揃っているサブスクとして今後も注目だ!

 Apple Arcadeでは、今回紹介した作品のようにシンプルながら奥深い、思わずハマってしまうゲームが多数収録されている。いわゆるゲーム好きがプレイしてもおもしろいと、継続して遊んでしまうものから、普段ゲームはプレイしておらず苦手意識がある人でも、楽しく遊べるゲームが多く揃っている印象だ。

 サブスクと聞くと、どこかにあるゲームを月額で遊べるだけ、と思われがちだが、今回開発者が語ったように広告を出さずに純粋にゲームを楽しんでもらおうと、本気で作られたオリジナルのゲームが遊べる、開発者にもユーザーにもメリットがあるプラットフォームになっていたことがわかった。

 Apple ArcadeはiPhone、iPad、iPod touch、Mac、または Apple TVがあればゲームがプレイできる。iCloudとGame Centerを使って、ゲームの進行やセーブデータ、友達とのプレイ状況を、Apple IDで同期できるので、複数端末で楽しめる。気になった人は、無料体験もできるので一度リリースされているゲームをプレイして遊んでみてはいかがだろうか。

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

ASCII.jp RSS2.0 配信中