真のロスレス伝送を可能にしたというワイヤレス・ヘッドホンが登場した。HED Technologiesの「Unity」だ。聞きなれないブランドだが、スイスのスタートアップらしい。名称を検索してみると技術者の求人募集が目に付くのでこれからの会社なのだろう。
UnityはBluetoothも使用できるが、「Full Fidelity」と称するロスレス伝送の仕組みではWi-Fi接続を採用している。スマートフォンの「Unity Multisource Music Player」というアプリで、音楽を再生して送信するようだ。そのプロトコルの詳細まではわからない。アプリはiOS版とAndroid版の両方が用意されているようだ。
またQobuz、Spotify、Soundcloudなどのストリーミングサービスとの連携も考慮されている。さらにサービスは拡張が可能であり、ハイレゾデータの再生も可能だということだ。スペックシートでは96kHz/24bitに対応とある。なお、Bluetoothの場合にはサポートするコーデックはSBCとAACになる。添付されるアダプターを使用して有線で接続することもできるようだ。
Unityのイヤーカップは建築用に使われる高品質な6063アルミニウムの一体成形で、カーボンファイバー強化のナイロンシャーシが組み合わされているとのこと。筐体的にもかなりしっかりとした設計がなされているようだ。内部のCPU(ARMベースのデュアルコア・プロセッサー)の冷却を考えたため、アルミ製のイヤーカップを採用したというのも面白い。これは言い換えると、冷却を考慮するほどのコンピューターが内蔵されているということだ。ファームウェアはOTA更新でアップデートが可能だ。
また内部にジャイロセンサーを内蔵していて、ヘッドトラッキングにも対応しているという。ノイズリダクションにも対応とあるが詳細は不明だ。連続再生時間は6~8時間とされている。
価格は2199ドル(3ヵ月のQobuz使用料込み)とかなり高めだ。販売サイトをみると、予約ではなく即購入できると思われるが、ウェブサイトのUnityの画像は、開発中のCG風なのでその実態はよくわからない。
Wi-Fi搭載のワイヤレスヘッドホンとしては、噂されているSonosのヘッドホンが初めて実用的な運用をするのではないかと思われていたが、ここに伏兵が現れたとみることもできる。しかし、Sonosのヘッドホンもまだ出てきていないところをみると、ヘッドホンにWi-Fiを搭載するのは、意外な難しさがあるのかもしれない。
実のところ、このUnityや先日紹介したSonicalの「Headphone 3.0」のような製品が、販売のメインストリームに躍り出るかどうかはわからない。しかし、音響面だけではなく電気回路部分やソフトウェアの比重が大きくなったこうしたヘッドホンが出てきたことは、電気回路一体型でしか成り立たないワイヤレスヘッドホンの隆盛がもたらした新たな可能性として興味深いと思う。
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