このページの本文へ

MRIによる霊長類の脳データベース、世界最大規模=理研らが公開

2023年05月09日 15時54分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

理化学研究所や慶應義塾大学らの共同研究チームは、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、小型霊長類であるコモンマーモセットの脳のデータを取得。得られたMRIデータや解析結果をサイトにまとめて、幅広い年齢層・性別・体格(体重)のライフステージごとに分類した、世界最大規模のデジタル脳の公開データベースを作成した。

理化学研究所や慶應義塾大学らの共同研究チームは、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、小型霊長類であるコモンマーモセットの脳のデータを取得。得られたMRIデータや解析結果をサイトにまとめて、幅広い年齢層・性別・体格(体重)のライフステージごとに分類した、世界最大規模のデジタル脳の公開データベースを作成した。 研究チームは今回、コモンマーモセットのMRI実験を麻酔下で安定して実施する手法、マルチコントラストなMRI情報を収集する手法と画像処理法を確立。0.8~10.3歳の健康な216頭のコモンマーモセットの脳MRIデータを収集し、その特徴を評価した。MRIでは、解剖学的なデータだけでなく、脳内の神経線維連絡や脳活動のネットワーク情報も収集。画像解析方法をコモンマーモセット脳に合わせて最適化した。 データベースを公開しているサイトでは、年齢や性別、体重など必要な情報を限定してMRIデジタル脳データを抽出し、ダウンロードできる。プレビュー機能で1個体ごとに脳画像を確認することも可能。運動野、感覚野、聴覚野、視床、線条体など脳内の各種領域を区分し、個々の脳ごとに領野アトラス(いくつもの領野を地図のようにマッピングしたもの)を作成し、画像と併せてダウンロードできるようにすることで、多くの脳科学研究者が活用しやすくしたという。 コモンマーモセットはヒトに近い脳構造を持つことから、薬物投与や疾患モデルとして、疾患解明に向けた脳科学研究において精度の高い知見が得られるとされている。今回の成果は、霊長類の高次脳機能を担うマクロレベルの神経回路全容の解明、ヒトの精神・神経疾患の克服、情報処理技術の高度化に貢献することが期待される。研究論文は、サイエンティフィック・データ(Scientific Data)オンライン版に2023年4月27日付けで掲載された

(中條)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ