物質・材料研究機構(NIMS)の研究チームは、非常に高い力学強度をもつ高分子ゲル電解質を創製し、リチウム金属負極(アノード)の保護被膜に適用することで、リチウム金属電池のサイクル性能を大幅に向上させることに成功した。リチウム金属負極を用いた次世代リチウム二次電池の実用化に貢献できる技術として今後が期待される。
物質・材料研究機構(NIMS)の研究チームは、非常に高い力学強度をもつ高分子ゲル電解質を創製し、リチウム金属負極(アノード)の保護被膜に適用することで、リチウム金属電池のサイクル性能を大幅に向上させることに成功した。リチウム金属負極を用いた次世代リチウム二次電池の実用化に貢献できる技術として今後が期待される。 研究チームが今回開発したゲル電解質は、高濃度リチウム塩を含む有機溶媒(電解液)と水素結合性高分子から形成される。このゲル電解質は非常に高い力学強度と伸長性を持つことが特徴であり、同チームはこれをリチウム金属負極の人工的な保護被膜として用いることで、リチウム金属電池のサイクル安定性が大きく向上することを実証した。今後は、保護被膜としてのゲル電解質の最適化を進め、広範な電解液系への応用や次世代正極(カソード)との組み合わせを検討していくという。 電気自動車の普及や再生可能エネルギー利用の促進などの社会背景から、より高性能なリチウム二次電池の需要が年々高まっている。リチウム金属負極は非常に高い理論容量と低い作動電位を持つ半面、充放電サイクルの寿命や安全性に問題があり、リチウム金属負極を用いた二次電池の充放電サイクルの安定性を向上させる技術が求められている。 研究論文は、アドバンスト・マテリアル(Advanced Materials)誌に2023年4月19日付けでオンライン掲載された。(中條)