コロナ禍が終息に向かい、「これから」という兆しが見えてきたかと思われました。しかし、追い打ちをかけるように食材や光熱費の高騰により体力が持たなかったり、心が折れて閉店するお店が続出しています。
武蔵野・多摩地区では今年に入ってからだけでも、「昭島大勝軒」「大海軒 八王子店」「上を向いていこう」「麺場なっくる」「支那ソバ玉龍(5/7閉店予定)」など、人気店や名店が閉店しています。
ラーメンの価格においては「1000円の壁」という言葉が用いられる事が多く、一杯1000円をオーバーするか否かを議論される事が多々あります。私個人としては、ラーメンを作る労力・家賃・材料費・光熱費・人件費などを考慮すると1000円を超えて当然ではないかと思います。
ただ、単純に1000円以上に値上げすれば良いという問題でもありません。
ラーメンは大衆食であり、1000円以下で手軽に食べられるものというイメージを持っている方が多く、ラーメン屋さん自身も手軽に食べられる価格で美味しいものを届けたいという気持ちの方も多く、また1000円以上になった場合の来客数の減少に対する怖さもあって踏み込めないラーメン屋さんも沢山あると思います。
これは、「ラーメンは1000円を超えて当然」という事が広く認知されない限り解決しない問題なのかもしれません。
そんな問題を抱えながら、品質を落として価格を維持するか、価格を上げて品質を維持し向上していくか、日々葛藤しているお店が沢山あるのが現状です。
とは言え、止まることのない食材や光熱費の高騰に対応するには値上げするしかないのも事実で、ラーメン1杯1000円以上になる時代はすぐ近くまで来ているのかもしれません。
さて、そんな悲観的な話ばかりしても仕方ないですし、明るく上を向いていかなければ福は呼び込めない!
そこで、この苦しい時代の中にあっても志高く、新規オープンした今年の新店をいくつか紹介します。
【麺笑 MENSHOW】
八王子の人気店「麺笑 巧真」のセカンドブランドとして、4月4日にオープン。
動物系不使用で煮干しをメインとした魚介系出汁に、濃い口の醤油を合わせた甘味の効いた和風テイストなスープ。そこに細麺を合わせたバランス型な一杯で、シンプルながらも奥深いコクと香り高さがあり、万人が楽しめる味わい。
【ぼっけもん製麺】
狛江にある「ぼっけもん」の支店として、2月10日にオープン。
風味豊かでモッチモチ食感のウドンのような中太麺に、酸味とピリ辛感を含んだ厚みのある醤油ベースのタレが絡んだ「油そば」的なもので、トロトロに煮込まれた大きな豚バラ軟骨がトッピングされ、これと麺を絡めて食べるのが堪らない。
ライスが一杯無料なので、残ったタレに投入して食べる「追い飯」も楽しめます。
【煮干し中華そば 煙 ~けむり~】
「パパパパパイン」などを手掛ける「株式会社パインナンバー」のニューブランドとして、3月1日にオープン。
力強い煮干し感がありつつも一般的な煮干しラーメンとはちょっと違ったアプローチで、濃厚なコクが感じられます。やわらかく甘味のある白醤油を合わせることでまろやかな味に仕上げていて、手揉みされて強い縮れの入ったモッチモチな太麺と相性抜群。
【ラーメン ひなた屋】
江東区・森下にある「ラーメン 吉田屋」出身の方によって、1月28日にオープン。
ライトながらもまったりしたコクと旨味が程よく感じられる豚骨醤油スープ。他の家系とは違った強めの甘味を効かせた醤油ダレが特徴的で、オリジナリティを感じる味に仕上がっていて、濃厚すぎないので老若男女問わず楽しめます。
【ラーメン めじ】
ご主人の体調の関係で2月末を以て閉店してしまった「ラーメン二郎 めじろ台店」出身の方が、1ヶ月のプレオープンを経て、4月3日にグランドオープン。
非乳化タイプでライトながらも肉出汁の旨味とコクがしっかりと感じられる甘味の強いまろやかスープに、オーションの風味と味わいを楽しめる自家製中太麺がマッチ!
シャキシャキの野菜や味付け背脂など「ラーメン二郎 めじろ台店」を踏襲した面も見え隠れする、二郎系初心者にも食べやすいガッツリ系です。
【風雲児 吉祥寺店】
新宿駅南口にある行列の出来る超人気店「風雲児」の支店として、3月6日にオープン。
濃厚な鶏白湯をベースに魚介を合わせ、ドロリとした高い粘度を持ちながらも口当たり滑らかなつけ汁が、コシの強い太麺によく絡みます。
甘味が強くドッシリした濃厚さがありながらも、魚介の風味や酸味を効かせる事で飽きの来ない絶妙な味に仕上げた一杯。
【鶏白湯そば 界 ~kai~】
ミシュランガイド神戸ビブグルマン受賞歴のある「担担麺専門店 ENISHI」や「島田製麺食堂」などを手掛ける「株式会社OMO」のFC店として、2月1日にオープン。
提供直前にブレンダーで撹拌して泡立てられたカプチーノのような鶏白湯スープは、濃厚ながらも滑らかでスッキリさのあるクセのない味わい。ポルチーニの風味と旨味がアクセントになっていて、モチモチした平打ち麺との相性抜群。
【らーめん 寛 -KAN-】
八王子の名店「樽座」などいくつかの名店で修業した方が、「AZITO-BAR」というBARの営業時間外にラーメンを提供する“間借り営業”というスタイルで、2月1日にオープン。
鶏を主体にした感じのふくよかな風味と味わいで、グッと惹きつける力強い旨味が感じられるやわらかな味わいの塩スープに、しなやかな細麺を合わせた上質な一杯を提供!
目立たない隠れ家的なお店ですが、是非足を運んでもらいたい一店。
【麺処 ますや】
多摩地区で様々な事業を手掛ける「桝屋グループ」の新規事業として、1月9日にオープン。
濃厚な鶏白湯をベースに広島県産の牡蠣を合わせた塩味のスープは、鶏白湯のまったりした濃厚さと牡蠣の味わいを見事に融合させて食べやすく仕上げています。
「特製」にすると牡蠣の酒蒸しもトッピングされて、牡蠣を存分に楽しむ事が出来ます。
【中華そば まつ尾】
人気の行列店「中華蕎麦 ひら井」のスタッフである松尾さんが、ひら井の定休日である火曜日の昼のみ“間借り営業”する形で、1月17日にオープン。
豚骨・肉・水のみで炊いて豚骨の旨味を引き出した濃厚スープにモッチモチな自家製麺を合わせた一杯は、シンプルながらも引き込まれるような奥深い味わい。
既にハイクオリティなものを提供していますが、日々進化をしているのでその変化も楽しめます。
ラーメンに限った事ではありませんが、今はコロナ禍に次ぐ物価の高騰によって日本全体が苦しい時だと思います。
ただ、そんな中でも向上心を持ってチャレンジしていこうというお店がたくさんあります。
ラーメン好きの私たちがラーメン屋さんに出来る事と言えば食べに行く事くらいしかありません。
これから頑張ろうという意気込みのある新店だけでなく、大切なお店や好きなお店に食べに行って「美味しかった」と声をかけるだけでも励みになると思います。
こんな時代だからこそ、一杯一杯を大切に食べていきたいですね。
ZATSU
2006年に開設したブログ「ZATSUのラーメン」の管理人。武蔵野・多摩地区を中心にしたラーメン食べ歩きを始めて15年以上。現在は年間400〜500杯程度を食べ、新店コレクターでありながらも老舗店やリピートするお店も多数あり。チェーン店からファミレス、カップ麺までも愛する真性の「ラーメン好き」で、基本的に何でも美味しく食べられる幸せ者。「自分の好みのラーメンを見つけて欲しい」と言う思いをモットーに色々なラーメンを紹介していきます。
本人ブログ(https://zatsu-ke.blog.jp/)
本人Twitter @zatsu_ke