戦国LOVE Walkerは、戦国時代前後(室町時代末期から江戸時代初期まで)をメインに、歴史というレイヤーであたらしい観光を考える「戦国メタ散歩」を提唱している。この連載は、既に始まっているお城連載とは別に、戦国にまつわる展覧会や博物館、美術館を訪ねたり、古戦場など、実際に起きた出来事を巡って、現地に足を延ばして、食や名物など様々な観光レイヤー(層)も楽しみながら、その土地を歩くなど、幅広く戦国を楽しむ連載である。
第1回は、東京・日本橋の三井記念美術館で始まったNHK大河ドラマ特別展 「どうする家康」(2023年4月15日〜6月11日)の内覧会の様子を伝える。この展覧会は、現在放映中の大河ドラマ「どうする家康」に合わせて開催する特別展で、家康の出生から他界までを文化財を通して紹介し、家康の生きた時代を浮き彫りにしていく。国宝や重要文化財も多く、テレビの特別番組や雑誌の特集などで紹介される主だった文化財が、徳川家康という人間を軸に一気に見れる貴重なチャンスだ。三井記念美術館の展示後は、岡崎市美術博物館・静岡市美術館へと巡回する。
国宝も重要文化財も、教科書でおなじみの文化財も一気に見られる徳川家康展決定版で改めて「神の君」の生涯のリアルに迫る
この展覧会は三井記念美術館に始まり、岡崎市美術博物館と静岡市美術館を巡回する展覧会で、展示作品は作品保護の観点から、会場ごとに異なるが、展示の構成は共通しており、以下の章立てでの展示となる。ただし、会場でのレイアウトはそれぞれ違っていて、各章の内容は工夫を凝らした順番で展示されている。例えば、三井記念美術館の第一展示室には、徳川家康の遺愛品 (第5章 「大御所時代」)が展示されている。
第1章「家康誕生」-今川からの独立と三河平定
第2章「戦国乱世の選択」-今川・武田との抗争
第3章「豊臣大名徳川氏」-豊臣政権下の家康
第4章「天下人への道」-関ヶ原から江戸開府
第5章「大御所時代」-駿府での生活と大坂の陣
第6章「東照大権現」-家康、神となる
展示物は伝説的な名品から、家康直筆の娘にあてた消息(手紙)や、手習いの和歌写し、ほほえましい水墨画まで、人間味の伝わるレアアイテムまで盛りだくさん。家康の生涯をたどることは勿論、戦国時代、桃山時代から江戸時代にかけての文化の変遷や、数多く出展された屏風に描かれた合戦の様子、使えた主君やライバル、大河ドラマでもおなじみの家族の肖像画をまざまざと見ることができる。
■見逃せない展示品
*展示期間は通期のもの、前期(4月15日〜5月14日)、後期(5月16日〜6月11日)のものがあるので、以下の出品目録を参考に。
https://www.mitsui-museum.jp/exhibition/images/230415/catalog230415.pdf
●国宝『短刀 無銘正宗(名物 日向正宗) 1口 伝正宗』 (鎌倉時代・14世紀)
東京・三井記念美術館蔵。
「享保名物帳」によると、緒の担当はかつて石田三成が所持し、関ケ原の合戦で東軍の水野勝成が美濃大垣城を攻略した際に、三成の妹婿である福原長堯から分捕ったという。その後、紀州徳川家に長く伝来した。相州正宗の美の極致を示した一口。
●重要文化財『太刀 無銘 光世 切付銘 妙純伝持 ソハヤノツルキウツスナリ 1口』(鎌倉時代・13世紀)伝三池光世 写真左
静岡・久能山東照宮博物館蔵
重要文化財『革柄蠟色鞘刀拵(太刀 無銘光世の拵)1口』(桃山~江戸時代・16 ~ 17世紀) 写真右
静岡・久能山東照宮博物館蔵
『ソハヤノツルキウツスナリ』は、久能山東照宮第一の重宝として伝来した家康の愛刀。家康は逝去の2日前に、この刀で罪人の試し斬りを命じ、自らの死後は剣威によって永く子孫を鎮護すると述べたと伝わる。社伝によると、大坂の陣後も不穏な動きのある西国に鋒(きっさき)を向けて立てて安置するように遺言した、という。『革柄蠟色鞘刀拵』も家康所有の打刀拵。
●家康ゆかりの茶道具
徳川家康自筆 小倉色紙臨模『こひすてふ・・・』(桃山~江戸時代・16~17世紀)写真奥
愛知・徳川美術館蔵
『灰被天目(大名物)』(南宋時代・13世紀)写真手前
愛知・徳川美術館蔵
『漢作茄子茶入 銘 茜屋(大名物)』(南宋時代・13世紀)写真右
愛知・徳川美術館蔵
『こひすてふ・・・』は、家康が壬生忠見の和歌色紙「こひすてふわがなはまだきたちにけり ひとしれずこそおもひそめしか」を所持しており、それを見ながら写した(臨模という)ものが何枚か伝わっており、その一枚。紀州徳川家伝来。この色紙は手習い風のもので、2行目の「たちにけり」の「に」が抜けている。
『灰被天目』は、家康の所有だったとみられ、元和九年(1623年)に、尾張徳川家が二代将軍・秀忠の御成を迎えた際に使用されたという。
『漢作茄子茶入』は、堺の茶人、茜屋吉松が所持していた、とされる。家康から駿府御分物の一つとして尾張徳川家に伝わった。
●『徳川家康自筆消息 新城(亀姫)宛』(桃山時代・天正15~16年 1587~1588年) 写真左
愛知・徳川美術館蔵
『水艸立鷺図(みずくさにたつさぎず) 1幅』 (桃山~江戸時代・16~17世紀) 伝徳川家康 写真右
岡・久能山東照宮博物館蔵
『自筆消息』は、家康から長女の亀姫にあてたもの。母は築山殿で、兄は信康。三河新城の奥平伸昌に17歳で輿入れした。母と兄を殺さざるを得なかった家康は亀姫に頻繁に消息(手紙)を送っている。
『水艸立鷺図』は、家康自筆と伝わる水墨画。水辺の草むらに立つ鷺の絵。家康自筆と伝わる絵は何点か伝わっており、いずれも素朴な筆致。
●『徳川家康画像 一幅』(江戸時代・17世紀) 徳川義直筆 写真左
愛知・名古屋東照宮蔵
愛知県指定文化財『伝通院(於大の方)像』(桃山時代・17世紀) 写真中央
愛知・楞厳寺蔵
岡崎市指定文化財『松平清康像 1幅』(室町~桃山時代・16世紀) 写真右
愛知・隨念寺蔵
『徳川家康画像』は家康の九男で尾張徳川家初代の義直が描いた晩年の家康。『伝通院像』は、家康の母を描いたもの。伝通院は家康が伝通院の没後に葬った小石川の寺院。『松平清康像』は家康の祖父を描いたもの。清康は安城から岡崎に入り松平氏の勢力を拡大した。
●『落合左平次背旗図 1幅』(江戸時代・天保14年 1843年) 写真左
静岡・久能山東照宮博物館蔵
『武田信玄像 1幅』(江戸時代・17世紀)狩野安信 写真右
三重・桑名市博物館蔵
『落合左平次背旗図』は武田勝頼の家臣である落合が、長篠の合戦の際に、周囲を包囲されている長篠城主の奥平信昌の家臣、鳥居強右衛門(とりいすねえもん)が武田方に囚われの身でありながら、家康の援軍が来ることを城中に知らせ勝頼に処刑された姿に感動し、磔姿を描かせて自らの背旗にしたという。『武田信玄像』は、白い毛を植えた兜を身に着けた一般的なイメージの信玄で、こうした類型的な姿は後世、上杉謙信との戦いが文学や歌舞伎、浄瑠璃の題材になることで大衆に広まっていった。
●重要文化財『豊臣秀吉像 南化玄興賛 1幅』( 桃山時代・16 ~ 17世紀) 写真左
京都・高台寺蔵
『明智光秀像 1幅』( 江戸時代・17世紀) 写真中央
大阪・本徳寺蔵
『織田信長像 1幅』(桃山時代・天正12年 1584年)狩野永徳 写真右
京都・大徳寺蔵
『秀吉像』は教科書などでもっとも有名な秀吉像の一つ。妙心寺の南化玄興による賛は、秀吉の配下、田中吉政の要請で着賛している。『光秀像』は唯一の絵。侍烏帽子を被り、縞模様の白地の素襖をまとっていて、表情は穏やかだ。『信長像』は裃をつけ、右手に扇子を持ち、帯刀して上畳に座す。近年の解体修理で、描き直されていることや、天正十二年(1584年)の信長三回忌法要のために制作された可能性が指摘された。
■大河ドラマ「どうする家康」パネルコーナー
ドラマの登場人物たちと記念撮影ができるパネルや、ドラマの紹介をする、インタビューや相関図のパネルが楽しい。
■音声ガイド
大河ドラマ「どうする家康」で於愛の方を演じる広瀬アリスさんが、家康の生涯とその人間味あふれる魅力を展示品と共に紹介する。音声ガイドは、ガイド機の貸出しとスマートフォンアプリの両方を用意している。アプリでは、コンテンツをスマートフォン・タブレットに一度ダウンロードすれば、配信期間中何回でも視聴可能。事前にダウンロードして会場に行くことも可能。
ガイド機の貸出し
貸出料金:650円
アプリ配信版(iOS/Android)
配信価格:650円
配信期間:2023年4月15日~2023年6月11日(予定)
*アプリ配信版のダウンロードの方法。①まず、アプリストアから「iMuT」をダウンロード。②アプリ内の「どうする家康」展の音声ガイドコンテンツ(¥650)を選択して決済、ダウンロード。
■「どうする家康」グッズも楽しいミュージアムグッズ
■開催概要
展覧会名:NHK大河ドラマ特別展 「どうする家康」
会場:三井記念美術館(東京都中央区日本橋室町 2-1-1 三井本館7階)
会期:2023年4月15日〜6月11日 ※会期中、展示替えを行なう。
休館日:月曜日(但し5月1日は開館)
入場料:
一般 1500(1300)円
大学・高校生 1000(900)円
中学生以下 無料
※70歳以上は1200円に。(要証明)
※20名様以上の団体は( )内割引料金に。
※リピーター割引。会期中一般券、学生券の半券の提示で、2回目以降は( )内割引料金に。
■公式ガイド
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