【ピラティスインストラクターの健康的ラーメ ンライフ♪】第20回
ラーメン界の星『Japanese Soba Noodles 蔦』創業者・大西祐貴を味わう!~再始動に込められた想い
2023年04月21日 12時00分更新
2023年3月27日、ラーメン史上初のミシュラン一つ星を獲得した『Japanese Soba Noodles 蔦』が埼玉県東所沢のラーメンWalkerキッチンに「再始動LIVE」として1日限りの出店! 2022年9月、オーナーシェフだった大西祐貴氏の急逝を受け、営業を休止していた蔦が2023年2月に営業再開したばかり。世界中のファンが待ち望んだ、蔦の再開までの道のりを、新生蔦スタッフに伺った。
伝説の名店『めじろ』店主を父に持ち、独自の道を突き進んだラーメン職人
大西祐貴さんの父は、伝説の名店『七重の味の店 めじろ』店主。高校卒業後、何もすることがなかった大西さんは、誘われるまま父の店で働き始めた。しかし、この時は、ラーメン屋の仕事に興味がなく、アルバイトとして4年ほど勤めて辞めてしまった。
新聞配達からファッションの道へ移り変わり、熱心に打ち込むようになって3年目。海外出張でアメリカの料理を食べたとき、ソースの濃い味が多いことから、ふと「出汁で食べるものがもっとあったら」と思った。それは、数年が経ち、アパレル業界で行き詰りを感じ始めて、再び思い出したという。「出汁をきかせた世界に通じるラーメンをもっと広めたい」。その思いがラーメンへと向き、再び父の店で働き始めた。30歳からの再スタートだ。
父の店で3年。修業しながら自分の味を作り上げた大西さんは、巣鴨に『Japanese Soba Noodles蔦』を開業する。2012年1月26日のことだった。
化学調味料を使用せず、食材本来の旨味を引き出した味を求めて、ラーメンを進化させ続けた結果、2014年7月に黒トリュフを使った醤油ラーメンが完成した。
青森シャモロック、天草大王などに浅利や魚介出汁を合わせたスープに、和歌山の杉桶二年熟成生揚げ醤油をメインに数種の醤油、貝などをブレンドした醤油ダレという構成。そこにトリュフのほか、ポルチーニ茸、フィグコンポート(イチジク砂糖煮)、トリュフ入りバルサミコクリームなど、今では蔦お馴染みの素材が使われている。たどり着くまで、食材を一つ一つ調べ、寝る間も惜しんで試作を重ねて創りあげたラーメンだ。
この独創的な一杯から始まり、2014年、『ラーメンWalker グランプリ』の全国総合ランキングで金賞を受賞し、2016年にはラーメン史上初のミシュラン一つ星を獲得した。その反響は凄まじく、早朝から並ぶ人が出始めたことで、整理券を配布するようになった。
海外への店舗展開オファーも相次ぎ、これまでシンガポール、香港、サンフランシスコなど、積極的に展開。一店舗、また一店舗出すごとに、かつて思い描いた「世界に通じるラーメン」が叶い始めた。
2019年12月13日、代々木上原に移転してからは、一杯3550円のラーメンを打ち出した。トリュフオイルに加えて、黒トリュフを削ってトッピングした超高級ラーメンだ。ラーメン1000円越えが取りざたされるなか、それを遥かに超えてきた。
2022年8月末、蔦へ行くと、厨房にはいつも通り大西さんの姿があった。目の前でスープを丼に注ぎ、麺をあげ、クロス湯切りする…シェフの鼓動を感じるカウンター席に座る。トッピング一つ一つを丁寧に盛りつけ提供された一杯、これが最後になるとは思わずいただいた。
営業休止から5ヵ月、「大西の味を残したい」と待望の再始動
2023年2月、待ちに待った蔦の再始動。復活を多くの人に知ってもらいたい! そんな想いをこめて、新体制でラーメンWalkerキッチン出店を迎えた。
大西さんとはアパレル時代から20年来の仲だという代表の浅倉由香さん。「もともと海外事業やJAL、セブン-イレブンの商品プロデュースなどをサポートしてきました。ミシュランを獲得して海外のお客様が増えたので、英語のメニューを作ったり。本格的にお店に携わったのは今回初めてです。大西が居なくなって、二人のシェフとお母様が残ってくれると言ってくれたので、私は代表を引き受けました」と、浅倉さんはここまでの経緯を語った。
再始動にあたって重んじたのは、「大西の味を忠実に守ること。大西の世界観を残したかった。店内の内装は変えずに、大西が考えたままでやっています。ただ、そこに引きずられるとシェフたちが成長しないので、どこまでシェフたちの味を出せるかというところもありました。味というのは、テイストの味ではなくて、彼らの味わいですね」と浅倉さん。
巣鴨時代は厨房に立ち、そして代々木上原に移転してからはホールを任されていた伊丹さん。大西さんとは20代前半から20年以上の長い付き合いだ。「大西が『ラーメンは自己表現だ』とよく言っていて、彼の思いが詰まったラーメンを、一人でも多くのお客様に食べてもらいたかった。だから、浅倉社長が『みんなでやろう』と言ってくれたときは、すごくうれしかったです」
一方、高嶋さんも大西さんとは高校時代から30年以上の仲だ。代々木上原では、大西さんの傍らで厨房を任されていた。大西さん亡き後、「ずっと大西の隣にいて仕込みを教わっていたので自信はありましたけど、世間に出すのが怖かったですね。大西イズムを受け継いできて、レシピはあるんですけど、それを再現できるのか。気持ちが入らないと料理が成立しないですから」と乗り越えてきたプレッシャーを淡々と語る。
創業者・大西祐貴を味わう一杯。変わらない味に想いをこめて
それぞれの想いを胸に迎えた、ラーメンWalkerキッチン一日限定の再始動記念イベント。提供するのは、蔦イズムを継承したラーメンだ。
スープは青森シャモロックと天草大王の丸鶏に浅利や本枯れ節など魚介を合わせ、醤油ダレは和歌山の二年非加熱丸大豆醤油など……と以前と変わらぬ素材はもちろんのこと、トリュフやポルチーニ、フィグコンポートなどで、食べ進めるごとに変わりゆく味の変化もそのままだ。しかし、最も重要なのは、「ラーメンを食べるっていうか、大西祐貴を味わうイメージなんですね」。それをいろんな人に味わってもらいたいと、高嶋さんは語る。
誰もが不安だった再始動だが「大西の隣には高嶋がいて、ずっとキッチンを守ってくれていたんで、すごく安心できた」と伊丹さん。高嶋さんも「今は、浅倉さんと伊丹さんの3人、すごくいいチームだと思います」と応えた。
蔦の再始動、そして今回の出店には、多くのラーメン界の同志たちが惜しみない協力・支援を申し出たという。ラーメンWalkerキッチンの出店は、生前大西さんが兄と慕っていた『SOBA HOUSE 金色不如帰』の山本店主が厨房に入った。
『百麺』の宮田店主をはじめ、多くのラーメン店主たちがキッチンに足を運び、再始動記念ラーメンを堪能してエールを送った。高嶋シェフは、「ここまで、自分たちだけではできなかった。本当に皆さんいろいろ協力してくださって、3人ともすごく心強く、感謝の気持ちでいっぱいです」と新生蔦への応援に応えた。
店内には、大西さんが生前大事にしていた思い出の品々が並び、その前で故人を偲ぶ多くのお客様の姿があった。
また、親交のあった店主たちから、多くのビデオメッセージが寄せられた。店内にあたたかいコメントが流れる中でいただく蔦のラーメンは、切なくもじんわりと心まで沁みる味がした。
多くのラーメンファンたちが駆けつけ、蔦再始動記念イベントは満員御礼。大盛況で終えたばかりのキッチンで、「新スタッフも意識が高くなっていって、やっとチームとしてまとまってきたと実感しています。これからまだまだ手直ししたり、やるべきことがたくさんありますが、日々進歩していこうと思います」と浅倉代表は決意を新たにした。大西シェフが遺した素晴らしい財産は、ラーメンを通して今後も未来につながっていく。ぜひ、代々木上原に足を運んでほしい。継承した想いとともに美味しいラーメンが待っている!
Japanese Soba Noodles 蔦
東京都渋谷区西原3-2-4 フロンティア代々木上原 B1F
11時〜15時 火曜休
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッター(https://twitter.com/tsutainfo)をご確認ください。
ラーメンWalkerキッチン
埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3-205
04-2968-7786
JR武蔵野線「東所沢」駅徒歩10分
https://ramen.walkerplus.com/kitchen/