国立遺伝学研究所(遺伝研)、大阪公立大学、沖縄美ら島財団総合研究センター、理化学研究所の研究グループは、ジンベエザメの視覚が深海に適応した仕組みを解明した。研究グループは以前の研究で、ジンベエザメの視覚に、深海まで届きやすい「青色の光」を効率良く受け取れるように感度の変化(ブルーシフト)が起こっていることを明らかにしていたが、仕組みは不明だった。
国立遺伝学研究所(遺伝研)、大阪公立大学、沖縄美ら島財団総合研究センター、理化学研究所の研究グループは、ジンベエザメの視覚が深海に適応した仕組みを解明した。研究グループは以前の研究で、ジンベエザメの視覚に、深海まで届きやすい「青色の光」を効率良く受け取れるように感度の変化(ブルーシフト)が起こっていることを明らかにしていたが、仕組みは不明だった。 今回の研究では、眼の網膜にある光受容タンパク質群であるオプシンのうち、微弱光環境での視覚に関わる「ロドプシン」に着目。近い関係にあるトラフザメやイヌザメとの比較を試みた。3種のサメのゲノム情報からそれぞれのロドプシンを合成し、波長感受性(吸収スペクトル)を比較したところ、ジンベエザメのようなブルーシフトはほかの2種のサメには起こっていないことを確認した。 3種のサメのロドプシンのアミノ酸配列を比較したところ、ブルーシフトを起こすことが分かっている部分では違いは見つからなかったが、ジンベエザメだけが94番目にアラニンを、178番目にフェニルアラニンを持っていることが分かった。 この結果から、ジンベエザメのロドプシンを基に、ほかの種で見られるアミノ酸配列に人工的に置き換えた変異型ロドプシンを作製し、吸収スペクトルを測定した。その結果、ブルーシフトは起こらず、トラフザメなどのほかの種と同じような吸収スペクトルを示した。このことからジンベエザメがブルーシフトを起こした原因が、アミノ酸の置換であることが分かった。 一般にロドプシンの熱安定性は高く、これは暗い場所で感度良くものを見るために欠かせない性質である。ジンベエザメが棲息する深海は水温が低く、熱安定性が低いロドプシンでも問題なく機能していると考えられるという。 研究成果は3月22日、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America:PNAS)にオンライン掲載された。(笹田)