神戸大学と立教大学の研究グループは、希少金属を使用しない触媒を新たに開発し、室温で1気圧という穏和な条件で二酸化炭素をギ酸に変換することに成功した。この反応は外部から電気などのエネルギーを注入する必要がなく、太陽光のエネルギーのみで進行する。
神戸大学と立教大学の研究グループは、希少金属を使用しない触媒を新たに開発し、室温で1気圧という穏和な条件で二酸化炭素をギ酸に変換することに成功した。この反応は外部から電気などのエネルギーを注入する必要がなく、太陽光のエネルギーのみで進行する。 太陽光を利用して二酸化炭素を化石燃料などに化学変換する「人工光合成」が期待を集めており、世界中で研究が進行しているが、これまでの研究例のほとんどで希少金属が必要不可欠なものとなっていた。地球規模で人工光合成を実行することを考えると、高価な希少金属が欠かせない方法は採用しにくい。 研究グループは、高い還元力(電子をほかの分子に変える力)を持つ非金属光増感剤の研究に取り組んでいた。その成果として、分子構造を修飾することで、紫外光よりもエネルギーが低い可視光の照射でも高い還元力を発揮できる非金属光増感剤を開発している。今回はこの技術を応用して新たに開発した増感剤に加えて、別の非金属触媒を利用して、可視光成分を主成分とする太陽光をそのまま利用する光反応を可能にし、可視光照射下での二酸化炭素光還元を実現した。 研究成果は3月23日、ネイチャー・ケミストリー(Nature Chemistry)誌にオンライン掲載された。今回開発した反応機能では、犠牲還元剤としてビタミンC(アスコルビン酸)が必要だが、今後はアスコルビン酸に代えて水を犠牲還元剤とする反応機構を開発するとしている。さらに、ギ酸に限らず、メタンやメタノールを二酸化炭素から製造する光還元反応の開発も目指す。(笹田)