BRT 専用大型自動運転バス 写真:JR東日本
この春から、自動運転のレベル4が始まる。
2023年4月1日、改正道路交通法が施行され、一部の地域で無人の車両が走行できるようになる。
自動運転には5つのレベルがあるとされる。
レベル4では、あらかじめ定めた経路であれば、「完全自動運転」の無人車両を運行できるようになる。
警察庁の広報動画などでは、「自動運転社会が到来します」という言葉も目にする。
実際、この春以降、どのくらいの変化が生じるのだろうか。
実用はまだ、レベル2まで
首都圏で暮らしている限り、いまのところ「自動運転社会の到来」は実感できない。
むしろ、人口減少や高齢化が進む地域で変化は先行している。
人口約2万3000人の茨城県境町では、2020年11月から、自動運転バスの運行を始めている。
町役場、ショッピングセンター、銀行、道の駅など町内にある主な施設を結ぶルートで、1日に18便が走っている。
最大8人まで乗車できるバスの料金は無料だ。
「誰もが生活の足に困らない町」を掲げる境町は、今後も順次、路線を拡大する方針だ。
ただ、境町で実装されているシステムはレベル2に当たり、完全な自動運転ではない。
バスにはオペレーターが乗っている。信号ではバスは必ず停車し、オペレーターが安全を確認し、コントローラーを操作して交差点を通過する。
遠隔監視のレベル4
春から始まるレベル4の新制度はおおまかに、次のようなものだ。
たとえば、ある自治体の事業で、自動運転バスの運行を担う企業があるとしよう。
自動運転バスを運行させる「特定自動運行実施者」は、運行ルートや、安全確保の態勢、自動運転のシステムなどを含む計画を都道府県の公安委員会に提出し、許可を受ける。
「他の交通に著しく支障を及ぼすおそれがないと認められる」などの許可基準があるため、交通量の多い道路を含むルートでは、現時点では許可が得られない可能性があるだろう。
新しい制度のポイントは、遠隔監視での運行が制度化される点だろう。
「主任者」と呼ばれる担当者が、遠隔監視装置の作動状態を確認することが義務づけられている。
新制度の導入を控えた企業の動きも見られる。
ソフトバンクは3月22日に、1人で車両10台の遠隔監視ができるシステムを発表した。
AIが車両を取り巻く、交通量や歩行者、障害物などの存在を検知し、トラブルが生じているときは、人間に対してアラートを発する。
このシステムを、新制度に当てはめてみると、主任者を1人置き、バス10台を運行するということになるのだろう。
自動運転は制度が先行
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