東京大学、北海道大学、オランダのワーゲニンゲン大学などの国際共同研究チームは、インドネシアやマレーシアの熱帯林から台湾や沖縄の亜熱帯林、鹿児島の暖温帯林から北海道の亜寒帯林に至る60の森林の継続調査のデータを解析。より温暖な森林ほど、植物が蓄積している炭素量(樹木炭素量)当たりの炭素生産量(樹木個体の成長や、新たに加入した樹木個体によって増加した炭素量の増加分)が高い低木性樹種の比率が高くなることにより、同じ樹木炭素量を持つ森林の炭素生産量が高くなることを明らかにした。
東京大学、北海道大学、オランダのワーゲニンゲン大学などの国際共同研究チームは、インドネシアやマレーシアの熱帯林から台湾や沖縄の亜熱帯林、鹿児島の暖温帯林から北海道の亜寒帯林に至る60の森林の継続調査のデータを解析。より温暖な森林ほど、植物が蓄積している炭素量(樹木炭素量)当たりの炭素生産量(樹木個体の成長や、新たに加入した樹木個体によって増加した炭素量の増加分)が高い低木性樹種の比率が高くなることにより、同じ樹木炭素量を持つ森林の炭素生産量が高くなることを明らかにした。 研究チームは、森林を構成するすべての樹木種(総計1587種、2604地域集団)の炭素生産量を、新たに開発した手法を用いて推定。単位面積当たりの炭素量が大きい種ほど、相対的な炭素生産量が小さい傾向があること、さらに、こうした種レベルの相対生産量と炭素量の反比例関係は熱帯から亜寒帯に至る森林の間でよく一致していることを見い出した。 この結果は、より温暖な森林では、種数の増加に伴い、面積当たりの炭素量が小さくターンオーバー速度(個体の成長・加入と死亡によって、生物炭素が入れ替わる速度)が速い低木種の比率が高くなるために、同じ炭素量を持つ森林の生産量が高くなることを示しているという。 自然林の持続的管理ではこれまで、炭素量が大きく、生産量も大きい高木種の保全が強調されてきた。だが、今回の研究によって、低木種を含む樹木種多様性の保全が森林生産量の維持にとって重要であることが明らかになった。研究論文はネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年3月13日付けで掲載された。(中條)