東京大学、国立国際医療研究センター、日本相撲協会診療所の研究グループは、英国で流行している新型コロナウイルス・オミクロン株の「CH.1.1系統」に対する既存の抗体薬、抗ウイルス薬、2価ワクチンの効果を検証し、既存の抗体薬がCH.1.1系統に対してほとんど効果を示さなかったことを明らかにした。
東京大学、国立国際医療研究センター、日本相撲協会診療所の研究グループは、英国で流行している新型コロナウイルス・オミクロン株の「CH.1.1系統」に対する既存の抗体薬、抗ウイルス薬、2価ワクチンの効果を検証し、既存の抗体薬がCH.1.1系統に対してほとんど効果を示さなかったことを明らかにした。 研究グループは患者からCH.1.1株を分離し、治療薬の効果を試験管内で検証した。まず、4種類の抗体薬(ソトロビマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ)の感染阻害効果(中和活性)を調べた。検証には、新型コロナウイルスの受容体であるACE2を発現する細胞と発現しない細胞を用意して、両方で効果を検証した。その結果、どちらの細胞でも4種類の抗体薬の中和活性が著しく低いとことが分かった。 続いて、日本国内で承認を受けている4種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル・リトナビル、エンシトレルビル)の効果を検証した。その結果、4種類ともCH.1.1株に対し、高い増殖抑制効果を示した。その効果は従来株に対する増殖抑制効果と同程度だったという。 さらに、mRNAワクチンの接種を受けた被験者から採取した血漿のCH.1.1株に対する中和活性を検証した。この検証では、ワクチン接種を5回受け、5回目にはBA.4/5株対応2価mRNAワクチンの接種を受けた被験者の血漿(5回目接種から3週間〜2カ月経過)と、ワクチン接種を3回受けた後にBA.2系統に感染した被験者の血漿の中和活性をそれぞれ調べた。 その結果、3回接種後にBA.2系統に感染した被験者の血漿は、ほとんどの検体で中和活性を有していたものの、CH.1.1系統に対する中和活性は、従来株やBA.2系統に対する中和活性に比べて顕著に低かった。そして5回目にBA.4/5株対応2価mRNAワクチンの接種を受けた被験者の血漿の中和活性を調べたところ、4回目接種後の中和活性と比較して3.6倍上昇していた。 研究成果は3月7日、「ランセット感染症(Lancet Infectious Diseases)」誌にオンライン掲載された。(笹田)