東京大学や米カリフォルニア大学サンタバーバラ校などの国際共同研究チームは、二次元カゴメ格子構造を持つ新たな超伝導体として注目されているCsV3Sb5において、他の非従来型超伝導体では観測されていない、不純物に強い非従来型超伝導が実現していることを明らかにした。
東京大学や米カリフォルニア大学サンタバーバラ校などの国際共同研究チームは、二次元カゴメ格子構造を持つ新たな超伝導体として注目されているCsV3Sb5において、他の非従来型超伝導体では観測されていない、不純物に強い非従来型超伝導が実現していることを明らかにした。 カゴメ格子とは、籠の網の目の模様を意味する「籠目」状に原子が配列した状態を指し、カゴメ格子構造を持つ金属物質は特殊な電子状態や超伝導状態が期待されている。研究チームは今回、CsV3Sb5に導入する不純物の量を制御し、CsV3Sb5の超伝導転移温度や、超伝導発現機構と密接な関係にある超伝導ギャップ構造にどのような影響を与えるかを系統的に調べた。 その結果、CsV3Sb5の超伝導転移温度は不純物量が少ない領域で大きく抑制される一方で、その後は不純物量を増やしてもほとんど抑制されないことなどがわかった。さらに、超伝導ギャップが異方的な構造を有していることも明らかになった。このような不純物応答は従来型の超伝導体や非従来型の銅酸化物高温超伝導体で見られる応答とは異なっており、研究チームによると、CsV3Sb5における非従来型の超伝導は、「ボンド秩序」に関連した新しいメカニズムによって実現していることが示唆されるという。 今回の成果は今後、カゴメ格子物質で期待される特異な電子状態や超伝導状態を理解するうえで重要な知見となることが期待される。研究論文は英国科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2023年2月7日付けでオンライン掲載された。(中條)