伴走サービスの導入を決めた理由とは?
寺岸:まだまだ伴走サービスは一般的ではないサービスだったと思いますが、伴走サービスを導入された決め手は何ですか?
小野:大きく2つあります。1つ目が要件定義の大変さと重要性です。私は前職ではシステムを作る側のSEでしたが、その時から要件定義の段階で、詳細な業務を理解した上で、要件を全て固めるというのはほぼ不可能ではないか、という印象を持っていました。その印象を持ったまま、ケミカルグラウトに入社して、自分が要件定義をしなければいけないということで自信が持てませんでした。
2つ目は、請負開発でよくあることなのですが、気軽な改良がやりづらい点です。ちょっとここにボタンが欲しいとか、デザインを少しだけ変えたい、という時に、打ち合わせして見積もりを取って発注して、とかなり時間がかかってしまいます。それなら、伴走サービスの方がいいだろうと考えました。
波多野:これまで取引してきた会社は、製品を売ることがゴールでした。MOVEDの場合は、DXが組織に根付くというところをゴールに置いているというところが決め手となりました。
MOVEDからは、ハタノシステムのDXとは生産性が向上して、新しい技術継承文化が生まれ、協業文化が生まれて、当たり前の業務改善文化が根付くことですよ、という提示がありました。これはまさにDXとは「組織作りであり、文化作りである」と痛感していた私たちにとっては、とても刺さる言葉でした。
私どものような中小企業にとっては、DXは壮大なテーマで不安もあるのですが、ここにゴールを置いていただいたことで、実現できるかもしれない、と希望も期待も持つことができました。ここが1番の決め手だと思います、
寺岸:伴走パートナーからは具体的にどんな支援をしてもらいましたか?
波多野:月1回の定例会議でkintoneの導入支援をしてもらいました。kintone以外にも、インフラやセキュリティなども含め、様々なIT関係に関する相談をさせていただいています。
最初に8つのアプリをMOVEDさん作っていただき、その後はkintoneの自立支援にシフトしています。組織作り風土作りのために、全社説明会からスタートして、定期的にMOVEDさんに来社していただき、相談会を開いたり、全社に対してコミュニケーションの活性化を目指す研修をしていただきました。現在はリーダー向けに伴走研修をしていただいております。
印象的だったのが、途中でMOVEDさんから、「DXを本気でやるなら、この責任者じゃない方がいいと思います」と提案がありました。驚きましたが、弊社のDXに真摯に向き合っている表れでもあると思いました。私たち自身も身の引き締まる思いをさせられるところも多々あり、もっと高みを目指していこうという気持ちにもしていただきました。
小野:弊社はアプリ開発の前段階に、ワークショップを行い、共通の目的、目標を作っています。ワークショップでは、実際に業務をやっている方が困りごとを付箋に書き出し、業務フロー上に整理して、原因を追究します。理想像をみんなで考えて共有をすることで、みんなの認識合わせをします。
その後はアプリを開発しますが、あまり作り込まず、30パーセントから40パーセントぐらいの機能と完成性でいったんユーザーにも使ってもらいます。やっぱり機能が足りないから、たくさん意見は来るのですが、その意見に沿って改良した方が、アプリはシンプルになるし、結果的に開発の工数もかからずに済みます。
伴走パートナーとの取り組みで変わる意識
寺岸:最後に、プロジェクトの効果について、教えてください。
小野:共通の目的を設定できるので、プロジェクトの成功確率が高まります。それから社内とは違う角度の意見が入ると、意見が集約されます。
技術立社が社是ですので、建設業に関する技術を開発して、早く現場で試すっていう文化は元々ありました。伴走サービスをずっと活用していると、アプリも一緒だということがわかりました。新しいアプリを作っては、早く現場で試して、どんどん使いやすくしていく。この雰囲気が最近芽生えてきまして、開発する側として非常にやりやすい風土になってきています。
これって、アジャイル開発ができるkintoneと、柔軟に対応していただけるパートナーさんの存在があるからです。最初のように1人で取り組んでいると、ここまでの規模感の開発は難しかったです。やっぱり伴走パートナーさんと進めることができて、非常に良かったと思います。
波多野:DXは全社員で進めていくもの、という意識の変化がありました。それまでDXはシステム管理者や担当部門で進めていくものだという意識がありましたが、伴走パートナーさんとのプロセスを踏んで、意識が変わりました。
思わぬ人の活躍もありました。たとえば、事務アシスタントの方が、積極的にアプリの作成に取り組んで、さまざまなアプリを作られました。管理職の人たちも、kintoneを活用して業務改善をしていこうという意識が芽生いてます。今、100以上のアプリが作られていていますが、それまでの会社の文化では絶対にあり得なかったことです。
建築設備工事業は紙資料が多いのですが、今回を機にペーパーレスに取り組み、100台あったキャビネットが70台まで削減できました。330坪から220坪のオフィスに移動することもでき、リモートワークの促進にもつながっています。kintoneを活用して、情報を見える化することで、成果だけでなくプロセスも見ることができ、私たちにとって非常に大きな実りがあったなと思っています。
セッションの最後、寺岸氏は「kintone導入に重要なのは、何を作るかではなく、どう進めるかでした。内製も外注も自社にはなんだか合っていない、そんな方には、ぜひ伴走DXという第3の選択肢をご検討いただければなと思います」と締めた。
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