2024年末には北陸新幹線が延伸、金沢~敦賀間が開業する金沢から少し先の小松市に行ってみた

いま、旅先として小松をすすめる3つの理由

文●LOVEWalker編集部

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 北陸の空の玄関口とも呼ばれる「小松空港」のある石川県小松市。羽田空港からほぼ1時間と、東京からも行きやすい。金沢もすぐそばで利便性が高く、自然にも恵まれ、車で15分程度の距離に加賀温泉郷などがあり、リゾート感も高く、住みよさランキングで上位に入るエリア。世界最先端の技術や製品の工場が立地するなど、ものづくりが盛んな産業集積エリアでもある。だけど、小松市を旅の目的地として考えることって、一般的にはあまり印象にないかもしれない。

 何度か足を運ぶ縁があり、小松市ならではの魅力を感じたのでここに3つの理由として紹介したいと思う。国内旅行でどこに行こうかなと考える中で、旅慣れた人にこそ、小松市を勧めたいのだ。冬の北陸は寒いやら天気が悪いやら・・・と思うかもしれないが、いやいや行く理由はある!

理由1 暮らすように過ごせる!

 旅好きは時に、アレコレと“旅のしおり”を彷彿とさせるような予定を詰め込むことはしたくない、ふらっと訪れて何となくその土地を楽しむような時間の過ごし方に魅力を感じる。小松市にはビジネスホテル的なものしかないイメージかもしれない。が、ユニークなステイ先を2つほど紹介したい。

石文化を感じながら感性を磨く「TAKIGAHARA CRAFT&STAY」

 小松の石文化というと『珠玉と歩む物語』が2016年に日本遺産に認定されているが、その象徴的なスポットの一つ「滝ヶ原石切り場」の近くには、「TAKIGAHARA CRAFT&STAY(滝ケ原クラフト&ステイ)」がある。滝ヶ原町に残る築100年の古民家を改装し、モダンなデザイン家具を配したアーティストやクリエイターの感覚を刺激するホステル。木地師や漆職人など地元伝統工芸を体験できる工房やワーケーションができる環境が整った、新しいスタイルの宿泊施設だ。

築100年の古民家を改装し、滝ケ原クラフトアンドステイとして、アーティストやデザイナーなどが泊まるホステルが完成

共有スペース。WiFi環境もよくワーケーションにも最適

ザハ・ハディッド、アキッレ・カスティリオーニらの家具が空間を満たしている

部屋のタイプは様々。写真はDirector’s Suite(クイーンサイズのベッドにバンクベッドが2台)家族、カップル、気の置けない友達との宿泊に最適。眺望もよく、自然の光と緑豊かな山々を感じることができる

美しい自然の中での農生活。滝ケ原ファームも隣接している

鶏小屋も立派。採れたて卵が食卓に登場する

隣のTAKIGAGARA CAFEでは、地元のそば粉を使ったガレットを中心に近隣で採れた旬の野菜の美味しさが楽しめる

離れにある石蔵はシックなバーになっていて、ナチュラルワインを楽しめる。ほかにも、地酒やクラフトウイスキーも楽しめる

小階段を上がると2階はレコード鑑賞をすることもできる、大人の隠れ家的な小部屋になっている

まさに大人の隠れ家

TAKIGAHARA Craft&Stay
住所:石川県小松市滝ケ原町タ4
URL:https://takigaharafarm.com/

築90年の町家を拠点に古き町並みと現代を行き来する「龍助25」

 2つ目の宿は、小松駅の西側、いまだ城下町の名残がある小松市龍助町にある約90年の町家を改装したゲストハウスだ。長年、空き家で一時は取り壊しも検討されたが、同市で不動産賃貸業を営む北市実さんと串町の団体職員、中村潤哉さんの昔の職人技が残るこの町家を残したいという思いで改修されて、開業と至った。

小松市龍助町のゲストハウス

 ゲストハウスの名前は「龍助25」。北市さんが「土地のゆかりを大切にしたい」との思いで、ゲストハウスがある龍助町25番地の住所からとったとのこと。各階貸し切りで一日二組限定。大きな玄関戸を開けると、幅の広い土間が入り口奥にある蔵まで一直線に延びていて2階まで吹き抜けた空間はとても開放的。一階は中庭を望む和室と、石壁の蔵を改装したバスルームは贅沢な造りだ。二階は和室が二部屋あり、組子細工の障子や柿渋の欄間、飾り棚のガラス文様といった粋な建具が魅力で昔の職人技や歴史が随所に感じられる。3世代家族が一棟貸切をしてゆったりと過ごすのも良い。

キッチンなどもあり、1階、2階の宿泊者で共同で使用可能。冷蔵庫や電子レンジ、各種調理器具も揃う

玄関を入ると一直線に石蔵まで通り抜けていける

奥には石蔵をリノベーションしたバスルーム

湯船も大きい作りとなっており、一人でゆったり入ることも、ご家族で一緒に入ることもできる

天井に大きな梁がかかっていることが一般的だが、『龍助25』には梁がなく、天井高くまで開放的な空間がひろがる

2階の廊下は回遊できる造りとなっており、空間の面白さにも目を引かれる

1階の「庭の間」は、朱色の壁と床の間の贅沢な和室

中庭を眺め、日常と異なるゆったりとした空間を感じながら時間を過ごすことができる

2階の大通りに面した山側の部屋が「由縁の間」。美しい格子戸からは龍助町の街並みを見ることができる。棚の美しい細工ガラスに当時の職人の技術の高さがうかがえる

2階の海側に面した部屋は「組子の間」。入口のふすまや奥の障子など、目を引く組子細工の障子が当時の職人技を伝える

龍助25
住所:石川県小松市龍助町25
URL:https://ryusuke25.com/

理由2 脈々と続く石文化と、今を繋ぐスポットがクール

 石川県を代表する陶磁器、九谷焼。実はその原料である「花坂陶石」は小松市で産出されていて、九谷焼を支えてきた。そんな九谷焼の原点ともいえる小松市では様々な形で、石文化を感じられる。

“石文化“の可能性を探求する「九谷セラミック・ラボラトリー」

 九谷焼の陶土を作るための工場を丸ごと館内に設置した、複合型文化施設。九谷焼の製造工程を学ぶことができる常設の展示や、新進気鋭の作家たちによる期間限定の作品展示を随時開催。体験工房では、ろくろ体験や手びねりでの成形体験、絵付け体験など様々な体験メニューがある。

2019年にオープン、自然の景色と一体となったような建物は、隈研吾氏設計によるもの

“大地と有機的につながるおおらかな平屋建築”が設計コンセプト。隈研吾らしい木材を使って織りなすシルエットが美しい

岩石の粉砕など陶土ができるまでの工程を見学できる常設展やギャラリー

ろくろや絵付けなどができる体験工房

ギャラリーでは販売もしている

宮創製陶所の作品は型おこしという技法で作られている。オンラインショップでも購入可能

CERABO KUTANI/九谷セラミック・ラボラトリー
住所:石川県小松市若杉町ア91
URL:https://cerabo-kutani.com/

器とお米にこだわる「HO GA」

 自然が作り上げた奇石に宿る白山信仰の寺「那谷寺」。紅葉の名所としても知られるが、その近くに2022年5月にオープンしたのが「HO GA」だ。

 店主の緒方康浩さんは千葉県出身。2019年から小松市地域おこし協力隊として、上記の「九谷セラミック・ラボラトリー」の運営や、九谷焼の芸術祭「KUTANism(クタニズム)」の企画・PRに携わってきた。3年の期限を迎えた後も小松にとどまりたいと、カフェとして運営しながら、九谷焼の職人たちのPRや販売のサポートも続ける。店の入り口には、ランチで使う小鉢、飯碗(わん)、スープボウル、メイン皿を並べ、客が選んだ組み合わせで料理を提供。

 提供時には作家の名前のプレートを付けてもらえて、自分の好みの作家と繋いでもらっているような感覚が新鮮だ。ランチでは「菩提米」をはじめ、「あきたこまち」「ミルキークィーン」など、さまざまな米をセレクト。器と食を通じて石文化に触れる、旅先での贅沢なカフェ体験だ。

那谷寺には全国から年間15万人もの方が訪れる、そのほど近い民家の集落の中に突然現れる

実際に使用して食事を楽しむことができる作家たちの器

コーディネートされているので、4パターンから選ぶようなイメージ

好きな器のセットを選べるのが面白い

白と黒で統一されたシックな店内

米どころ・石川県のお米と一緒に楽しむ洋食中心の創作料理が楽しめる。お米は日替わりで甘みや食感が異なる2種類の品種から選ぶことができる

「HO GA」
住所:石川県小松市那谷町サ76-1
URL:https://ho-ga.jp/
※冬季休業期間があるので営業日は公式HPで要確認

理由3 難関突破の神(パワースポット)「安宅住吉神社」がある

 奈良時代(782年)に創建された1200年以上もの長い歴史をもつ神社。およそ800年前、安宅の関で兄、源頼朝に追われて落ちのびる悲運の武将、義経をかばう弁慶。知りつつ逃がす関守富樫。日本海を背に、感動のドラマがあった。以来、歌舞伎の十八番の一つとして今日まで受け継がれてきた。安宅住吉の大神のお助けにより、一行は難関の『安宅の関』を見事突破する。そんな伝承から、難問突破に霊験があるとされて、全国唯一の難問突破の霊神として多くの信仰を受けている。

 また、境内に石川県指定史跡ともなっているその「安宅の関跡」がある。東に霊峰白山、西に日本海、眼下に源平古戦場の梯川を見下す景勝の地でもあり、境内から日本海に沈む夕暮れを見ることができる。義経、弁慶の時代に思いを馳せながら、松林や海辺を散策したい。

安宅住吉神社は小松空港から車で約12分とアクセスも良い

本殿へのアプローチも歴史を感じる厳かな雰囲気

御社殿。本殿を中心に末社金刀比羅社・稲荷社・関ノ宮をそれぞれ祀っている

境内に立つ勧進帳を読む弁慶像

巫女さんによる無料ガイドも

 安宅住吉神社でユニークなのが、自由参拝でも巫女さんによる無料ガイドを受けられることだ。神社の由来から『勧進帳』との関わり、そして江戸時代から奉納されてきた『勧進帳』ゆかりの絵馬などを丁寧に説明してくれる。

歌舞伎 十八番の一つとして今日まで受け継がれた勧進帳の物語。 安宅住吉の大神のお助けにより、一行は難関の『安宅の関』を見事突破する

『勧進帳』の舞台を描いた役者絵などが飾ってある

安宅住吉神社(あたかすみよしじんじゃ)
住所:石川県小松市安宅町タ17
URL:http://www.ataka.or.jp/

旅先として小松がお勧め!

 以上、いま、小松に行くべき3つの理由を紹介したが、いかがでしょうか。

 歴史ある古民家や町家に泊まって、ゆったりとした時間を過ごし、九谷焼を支えてきた石文化、器とお米にこだわるカフェの食事を体験。1200年以上の歴史を持つ「安宅住吉神社」にお参りして、巫女さんに歌舞伎「勧進帳」との関わりを説明してもらい「難問突破」の御利益をもらう。その土地が楽しめる、贅沢で思い出に残る旅になる気がします。

 東京駅から金沢駅を最短2時間半で結ぶ北陸新幹線が、2024年は西の敦賀駅まで伸び、「新幹線小松駅」も開業します。飛行機を使っても、新幹線に乗っても、小松市は気軽にアクセスできる地域です。魅力たっぷりな小松市を、旅行の目的として考えてみませんか。