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【先行レビュー】大幅進化の第2世代「HomePod」比較するライバルがいない理由(本田雅一)

2023年02月01日 12時00分更新

文● 本田雅一 編集●飯島恵里子/ASCII

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1台使いでもステレオイメージや空間オーディオのイメージは感じられる

ほかに競合のないオーディオ体験

 このように整理すると、1台使いの場合はアマゾンのEcho Studioと競合するように感じるだろうが、実はどの構成においても、そこから得られるオーディオ体験は独特で、比べられる製品が思いつかない。

 1台使いの場合、ステレオイメージや空間オーディオのイメージは感じられるが、明瞭な音像が空間に並ぶわけではない。Echo Studioもステレオイメージは明瞭ではない、なんとなく広がりがある音という面では表現力に大きな違いはないが、どんな場所に置いてもバランスよく音楽を聴かせ、HomePodの周囲、どの位置にいても違和感がないという点で極めて特殊な体験だ(厳密にはケーブルが出ている反対側が正面で、その前から聞くべきだが)。

 近年、ルームフィリングサウンドという、部屋全体を埋め尽くしてリラックスして聴ける音の製品が登場してきているが、そうしたルームフィリングサウンドの中でも最もリッチな音を出す製品と言えるだろう。

 ただここまでなら、初代HomePodでもアップデートによって近いところまで来ていた。低域の音量感を自動調整する部分は第2世代が優れているが、第2世代が本領を発揮するのはステレオペアを組んだ場合だ。

 この場合、例えば一般的なステレオスピーカーと同じように正面に2台を設置し、その前方、正三角形の頂点に鎮座すれば明瞭なステレオイメージが得られる。音場は程よく豊かに聞こえるが、残響のバランスもよく特定の帯域にピークが立ったり、あるいは壁からの反射で低域が膨らみすぎるような傾向もない。

 軽やかでノイズっぽさがなく聴きやすい音はアップルらしいが、音場表現はリッチで包み込むような音場。さらに空間オーディオの音楽を聞くと、きちんと立体的な表現力まであるのに驚かされる。

 ところが実はオフセンター、つまりスイートスポットから外れた位置に移動しても、自然に聞こえる。もちろん、ステレオイメージや空間オーディオによる立体音場は崩れるが、部屋のどの位置でもリッチな音が楽しめる。

 スピーカーに近づいてみると、それぞれのHomePodから(1台使いの場合と同様に)360度、全方位に音が出ていることがわかる。それでいてステレオイメージやDolby Atmosの再生に違和感がない理由は定かではないが、ルームフィリングサウンドとステレオ再生、空間オーディオ再生が同時に成立しているのだ。

 常に4つのマイクで周囲からの反射音をモニターしているHomePodだが、ビームツイーターは1000の設置環境で、1万曲を用いて最適化する機械学習を実施し、設置環境に応じて異なる残響のエンベロープ(減衰カーブ)を適応的にコントロールするアルゴリズムが入っているという。

 ここまでグレードアップするならば、ぜひ2台使いしたいと思おうほどの違いだが、実はこの2台使いを勧めたい理由はもうひとつある。

映像作品用スピーカーとして使うと印象がさらに変化

 ディフューザーを用いて360度に低音を放出する4インチウーファーは、長いトラベルストロークを持つことで表現できる空間を大きくしているが、音楽再生時には「欲張らない」ところに好ましさを感じた。

 再生できない音を、いかにも再生できているように誤魔化す技術はあるのだが、そうしたことはせず、このサイズに見合う、言い換えれば搭載するドライバユニットの能力を超えないように再生する。このため、曲によっては「低域がない」と感じるかもしれないが、一方で破綻がないため、どんな場合でも(低域だけではなく全帯域で)全体域にわたって破綻のない音を聴かせる。

 これはHomePod miniでも実施されていた機械学習による動的な音質調整と同様のことを、HomePodでもしているということだろう。第2世代になるにあたってビームツイーターの数は減っているが、それでも圧倒的に進化しているのは、演算によるオーディオ体験の改善が大きく変化しているからだろう。

 初代HomePodに搭載されていた「A8」に対し、第2世代ではApple Watch Series 7に搭載している「S7」がさまざまな処理を担当している。このSiPに内蔵されるオーディオDSPは、iPhone 11搭載のA13 Bionicと同世代のものだ。

Apple TV 4Kを接続し、4Kプロジェクターを用いて120インチスクリーンに映像を投射しながら、Apple TV+やPrime Video、Netflixなどの映像作品をHomePodのDolby Atmosで楽しんでみた

 しかし、こうしたインプレッションも、HomePodのごく一部の実力しか示していなかった。というのも、映像作品用スピーカーとして使い始めると、さらに異なる顔を見せ始めたからだ。Apple TV 4Kを接続し、4Kプロジェクターを用いて120インチスクリーンに映像を投射しながら、Apple TV+やPrime Video、Netflixなどの映像作品をDolby Atmosで楽しんでみたところ、音場がさらに大きくなり、またサブウーファーが表現する音も聴こえ始めた。

 どうやらHomePodは映像作品と音楽とで、異なる音の表情を見せるようだ。

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