核融合科学研究所などの共同研究チームは、九州大学の直線型の基礎プラズマ装置「PANTA」において、従来研究されてきたイオンの運動サイズのミクロな揺らぎよりも、さらに100分の1小さい、電子の運動サイズの揺らぎの時空間構造を、初めて詳細に観測することに成功した。
核融合科学研究所などの共同研究チームは、九州大学の直線型の基礎プラズマ装置「PANTA」において、従来研究されてきたイオンの運動サイズのミクロな揺らぎよりも、さらに100分の1小さい、電子の運動サイズの揺らぎの時空間構造を、初めて詳細に観測することに成功した。 プラズマのイオンや電子の運動の大きさ、およびその集団運動により現れる揺らぎの大きさは、温度が高いほど、磁場が弱いほど大きくなる。そこで研究チームは、磁場を通常の実験より4分の1に弱くすることで、イオンや電子の運動の大きさおよび揺らぎ自体の大きさを4倍に拡大。さらに、実験条件を調整することで、イオンスケールの揺らぎを抑制し、電子スケールの揺らぎのみが発生可能な実験条件を作り出した。 一般に細かい構造を見るためには、高い空間分解能で計測するというアプローチを取る。だが、研究チームは今回、実験条件の制御により、細かい構造自体を観測できる大きさに拡大するというアプローチを採用。PANTAに密に並べられたたくさんのセンサーを用いて、電子スケール揺らぎが発生し、時速7000キロメートルでプラズマ中を伝播し、消滅していくまでの様子を観測した。観測された電子スケール揺らぎは、これまで同装置で観測されてきたイオンスケール揺らぎよりも100倍程度空間的に小さく時間的に速い現象であり、実質的に100倍程度の解像度での揺らぎの観測を実現したことになるという。 今回の成果は、将来の核融合炉でプラズマの熱や粒子が逃げるメカニズムの解明や、宇宙空間における多様なプラズマ現象の謎の解明などにつながることが期待される。研究論文は、サイエンティフィック・レポーツ(Scientific Reports)に2022年12月12日付けで掲載された。(中條)