NTTと東京大学などの共同研究チームは、脳の情報処理から得た着想を基に、深層ニューラルネットと物理系を計算過程に用いる物理ニューラルネットに適した新たな学習アルゴリズムを考案。光回路を用いた物理ニューラルネットに適用して、学習過程を含めて効率的に計算可能であることを実証し、物理ニューラルネットとして世界最高性能を実現した。
NTTと東京大学などの共同研究チームは、脳の情報処理から得た着想を基に、深層ニューラルネットと物理系を計算過程に用いる物理ニューラルネットに適した新たな学習アルゴリズムを考案。光回路を用いた物理ニューラルネットに適用して、学習過程を含めて効率的に計算可能であることを実証し、物理ニューラルネットとして世界最高性能を実現した。 研究チームは、ニューラルネットの学習方法の一つである誤差逆伝播(BP)法を、脳の情報処理上で実現しやすい形に改変された「ダイレクト・フィードバック・アライメント法(DFA法)」に着目。物理ニューラルネットでの実装に適する形に拡張することで、学習過程を大幅な簡略化し、物理ニューラルネットで事実上実現できていなかった学習を可能にした。また、本手法を種々の深層学習モデルへ適用し、有効性を確認した。 さらに、物理ニューラルネットへの適用性を実機実験で検証するために、深層リザーバコンピュータと呼ばれる深層ニューラルネット・モデルを、光ニューラルネット上に実装して原理検証実験を実施。従来非常に時間がかかっていた物理ニューラルネットの学習過程が現実的な時間で実行できることを実証した。 今回の研究成果は、人工知能(AI)向けコンピューティングの電力消費や演算時間の大幅な低減につながるものと期待される。研究論文は、2022年12月26日に発行された英国科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。(中條)