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TSIホールディングスとアリババクラウド、JP GAMESが提携

縫製用の3Dデータをメタバースに まずはPEARLY GATESから

2022年12月16日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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 2022年12月15日、アパレル企業のTSIホールディングス、クラウド事業者のアリババクラウド、ゲーム開発スタジオのJP GAMESの3社は提携を発表し、ファッションにおけるデジタル体験を提供するメタバース空間構築のプロジェクトを開始する。また、アリババクラウドは日本で3ヶ所目となるデータセンターの開設を発表し、プロジェクトのインフラとして利用する。

アリババクラウドジャパン カントリーマネージャー ユニーク・ソン氏、JP GAMES 代表取締役 田畑端氏、TSIホールディングス 上級執行役員 今泉純氏

TSI HDのメタバース活用をアリババクラウド、JP GAMESと共同推進

 「ファッションエンターテインメントの力で、世界の共感と社会的価値を生み出す」というパーパスを掲げるTSIホールディングスは、2011年に東京スタイルとサンエー・インターナショナルが経営統合して発足したアパレル企業。前身から数えて70年以上の歴史を持ち、「PEARLY GATES」や「MARGARET HOWELL」「HUF」などレディス、メンズ、スポーツ、ストリートカジュアル、アウトドアまで50以上のブランドを抱える。昨今はアパレルのみにとどまらず、飲食やコスメなどファッションと親和性の高い事業を運営し、ライフスタイルを提案している。

50以上のブランドを展開するTSIホールディングス

 また、ECとリアル店舗と融合したオムニチャネルにも積極的だ。2020年のアパレル業界の平均EC化率が20%を切っている(経産省調べ)中、TSIホールディングスの直近のEC売上高は全体の34.4%を占める。「Salesforce Commerce Cloud」のファーストユーザーでもあり、リアル店舗との相乗効果が高い自社EC比率も45.4%と毎期伸張を続けているという。

 今回のメタバースプロジェクトでは、TSIホールディングスが2017年から導入している3Dシミュレーション「CLO」で制作した洋服の3Dデータをメタバースに取り込み、アバターに着せることで動作や重ね着などの技術検証を行なう。

縫製用の3Dデータをメタバース空間にコンバート

3D画像と実物写真の比較

 この一連のメタバースプロジェクトのために提携したのが、グローバルでクラウドサービスを提供するアリババクラウドと、メタバース構築フレームワーク「PEGASUS WORLD KIT」を開発したJP GAMESになる。アリババクラウドのインフラ、PEGASUS WORLD KITを用いることで、大容量の縫製用3Dデータをメタバース空間に最適化し、本物の質感を持った衣装としてアバターに着用させることが可能になるという。あわせて、同社のゴルフウェアブランドである「PEARLY GATES」を中心に、メタバース空間上でのコミュニティ体験の開発を行なう。

「PEARLY GATES」を中心に、メタバース空間上でのコミュニティ体験を開発

デジタル空間でもっと自由にデザインできる環境を

 発表会においてTSIホールディングス 上級執行役員の今泉純氏は、長らく品質重視だった日本のアパレル業界がデザイン力という点で課題を抱えている点を指摘。また、SDGsという観点からしても、大量生産・大量消費という時代は終わっており、顧客が本当に欲しくなる服をよりすぐって作る必要があるとアパレル企業としての課題を説明した。

 その上で、今回のプロジェクトにかける想いを今泉氏は「超・ファッション」と表現。コストや市場ニーズ、物理的な材質などいわば「リアル」の呪縛」から解き放たれ、「デジタル空間でもっと自由にデザインできる環境」としてメタバースに期待する。「公道を走らず、速さを追求できるF1のような環境がメタバースでできないかと思っている」と語る。

超・ファッションの想いで、自由にデザインできる環境を

 JP GAMES代表取締役の田畑端氏は、2Dから3Dへの移行を遂げたゲーム業界の変化を「絵で描いた家とリアルの家くらい違う」と表現。メタバース化においてはさまざまな空間技術やノウハウが必要になる点をアピール。その上で「アバターで出かける世界がどんどん拡がる。アバターへの投資価値を感じられるのが今回の提携」とコメントした。

 今泉氏から「多くの会社は基盤構築にコストと時間をかけていて、肝心のサービスに注力できていない」という指摘を受けた田畑氏。その点、今回JP GAMESとしてゲーム開発で培ってきたメタバース空間の構築や体験イベントの設計まで推進していくという。

アリババクラウドは日本で3ヶ所目のデータセンターを構築

 発表会の冒頭登壇したアリババクラウドジャパンのカントリーマネージャーであるユニーク・ソン氏は、まず東京に第3データセンターをオープンしたことを発表。ストレージやネットワーク、コンピューティング、データベース関連までの幅広いサービスを備え、セキュリティやプライバシーに配慮したコンプライアンス規制にも対処するという。なお、今回のデータセンター開設により、アリババクラウドのネットワークは世界28地域、86のAZ(アベイラビリティゾーン)に拡大したという。

アリババクラウドジャパン カントリーマネージャー ユニーク・ソン氏

 また、メタバースの実績に関しては、2022年の北京オリンピックやT-Mall(天猫)ラグジュアリーショッピングなど多くのプロジェクトでメタバースを活用している点をアピール。「メタバースは非常に包括的。アリババクラウドは基盤を提供していく」(ソン氏)と述べ、高い視覚表現力、体験デザイン、徹底的な行動分析、安定したインフラの4点でエンタープライズレベルのメタバース構築を支援するという。

 これに対して、今泉氏もアリババクラウドをパートナーとして選んだ理由として、「独身の日」のようなスケールの大きなコマースプロジェクトを支えるスケーラビリティや安定性に加え、先進的な中国のECやデータマーケティングを学べる点を挙げた。

 なお、2022年9月から始まったプロジェクトはPoCに進んでおり、2023年4月から開発項目や仕様確定の製作がスタート。メタバース空間のコマースやコミュニティサイトなど新しい顧客体験の軸にした成果物を2023年度中にはリリースする予定となっている。

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