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これからの快適・省エネは「人単位」パナソニック新会社X PLACEの挑戦

2022年12月22日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita) 編集●ASCII

提供: パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社

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 スイッチやコンセント、電材などを扱うパナソニック エレクトリックワークス社が12月1日、オフィスIoTサービスを手がけるMYCITY(マイシティ)社との共同出資会社X PLACE(クロスプレイス)を立ち上げた。

 スマートフォンの位置情報をもとにオフィス内での人の動きを検知するMYCITYの技術を使い、オフィス環境のコンサルティングや、ビル内設備の制御システムを提案する。たとえば、寒がりと暑がりを人単位で検知して、空調を自動制御するシステムなどを想定しているという。

 エレクトリックワークス社がX PLACEを立ち上げたのは、同社の売り切り型ビジネスを変えるためでもある。ただ機器を売って終わりではなくデータを取得・分析して次の提案に活かすソリューション型ビジネスへの転換だ。

 ソリューション型とは具体的にどんな世界観で、X PLACEは一体どんな将来像を描いているのか。MYCITYの代表でX PLACEでも代表取締役を務める小島亮平氏、同じくX PLACE取締役の佐藤毅氏、そしてパナソニック エレクトリックワークス社所属でX PLACE取締役の北村常弘氏に話を聞いた。

暑がりさんが来たときだけ「冷え冷えゾーン」が出現

── 初めに、X PLACEが目指す世界観について教えてください。

小島 ゴールは快適な環境と省エネの両立。よくあるテーマではありますが、人の位置情報を起点にその両立を達成することがX PLACEのミッションです。

X PLACE代表取締役 小島亮平氏

── いわゆる脱炭素化ですか。

小島 もっと身近な言い方をすると、このごろ上がってきているテナントさんの電気料金を削減するお手伝いができるのではないかということですね。

── 具体的にはどんな提案で電気料金を下げていくんでしょう。

佐藤 フェーズ1はコンサルティングです。MYCITYがやってきた人起点のオフィス環境のデータ化をベースに、パナソニックのノウハウを加味したレポートを提供します。

 フェーズ2は、位置情報を使った機器操作。取得したデータを空調や照明などの様々な機器と連携させて、スマホから操作できるようにしていきます。

 そしてフェーズ3は、人を起点とした快適環境の提供とエネルギーマネジメント。ここが挑戦的目標としている部分です。たとえば私が暑がりで、普段冷房温度を23℃に設定していたとしたら、私が自席やよく使う執務エリアに近づいただけで設定温度が自動的に23℃になる。暑がり・寒がりといった属性情報と利用履歴をもとに機器を自動制御することで消費エネルギー量の削減を目指そうというわけです。

── 2024年度中にフェーズ3まで進めると。まず提供するのはフェーズ1のコンサルティング(オフィス診断レポートサービス)ですね。費用はどれくらいなんでしょう?

小島 オフィス診断レポートサービスの価格は広さや人数によって変わりますが、たとえば1000平米のオフィスで70万円程度です。社員さんにアンケートをとった上、1ヵ月計測したデータを合わせ、レポートにまとめて提供します。

── こうしたコンサルティングは業界では珍しいものなんですか?

北村 データをもとにしたエビデンスと、従業員の本音をうまくアレンジしたレポートを作成します。それを両方やられているところはないですね。

X PLACE取締役 北村常弘氏

── スマホの位置情報を取得するというのはどうやっているんでしょう。

佐藤 ビルの中にBluetoothビーコンを約7mピッチで設置させていただいています。利用者のスマホに専用アプリを入れると、近くにあるビーコンがデータを拾い、推定位置情報を「ここにいるよ」と表示するようになっています。

X PLACE取締役 佐藤毅氏

── どんなスマホでも使えるんですか?

佐藤 iPhoneなら「iPhone 8以上」などの条件はありますが、市場の9割以上はカバーできるようにしています。一般的な社用携帯ならほぼ対応できるかと。

── 「暑がりさん」が座っている場所までわかるんでしょうか。

佐藤 データの取得精度がいい場所であれば1メートル誤差でわかります。執務エリアで言えば「この島にいる」という検知ができますね。

── アスキー編集部にはみやのさんというすさまじい暑がりがいて、冬にも半袖シャツで入ってきて「暑い暑い〜」と言いながら冷房をつけるんですよね。今後自動制御ができるようになれば、みやのさんだけをピンポイントで冷却することもできるんでしょうか。

編集部・みやのプロ(冬に冷房を使う)

小島 できると思います。ただ、方法としては、オフィスの中でガンガンに冷房が効いたエリアとそうではないエリアを分けて、みやのさんが過ごしやすい場所を作る形になるかなと思います。みやのさんが出社する日だけそれができるようになるので。

── みやのさんが入ってきたときに「冷え冷えゾーン」が出現するような?

小島 そうです。そうすればみやのさんがあったかいエリアに行って温度を下げてしまうことはなくなりますよね。もしみやのさんに共感する暑がりがいたら徐々に涼しいエリアが広がり、そうでなければ涼しいエリアは狭くなる。いまはフリーアドレスが主体だし、そうした島のようなものがあってもいいと思います。

── オフィスが部署でなく体感で分けられていくというのが面白いですね。実際に制御するとなると難しいところもありそうです。

佐藤 技術的な挑戦はあるなと思います。秋や冬に突然寒くなった日には着込んでいったりしますよね。昨日は25℃設定で快適だと思っていたけど、今日は厚着だったから23℃設定でよかったとか。そうした服装や行動などの属性情報に基づく快適性を定義していきたいと思っています。

── そうして省エネ運転を高度化して、電気料金を下げていく。

小島 最終的なゴールとしてはそこですが、もう1つはオフィスのレイアウトもあります。今はオフィスも福利厚生の1つという時代になってきています。オフィスの一部をトレーニングジムにするという会社も出てきてますし、夜の時間帯であればカフェスペースで夜にお酒を出すという会社もありますよね。

── うらやましい話ですよね。ただ、せっかくオフィスにカフェバーを作っても一部社員しか使わなかったというさみしい話も聞きます。

小島 そうなんです。オフィスでそうしたチャレンジをしたとき、ちゃんと利用されているかわかるようになるのがX PLACEのサービスです。レイアウト変更って、総務部長が「こうしましょう」と社長にプレゼンしたとき、結局「社長のお気に入りはどっちですか」というお伺いになってしまうことが多いと思うんですが、そこにちゃんと根拠をもたせられるようにもなります。さらに計測を続けることでオフィスの出社率も適正値を維持できて、社員の満足度を上げられているということがデータで示せるのも、このサービスのもう1つの価値だと思います。

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