京都大学の研究チームは、今年で爆発から450周年を迎える「ティコの超新星残骸」が膨張する年単位の「動画」を解析することで、星間ガスが加熱されていく過程を世界で初めてリアルタイムで捉えることに成功。星間ガスの温度が数年のうちに1000万度近くまで急上昇し、X線を放出して明るく輝いていく様子を明らかにした。
京都大学の研究チームは、今年で爆発から450周年を迎える「ティコの超新星残骸」が膨張する年単位の「動画」を解析することで、星間ガスが加熱されていく過程を世界で初めてリアルタイムで捉えることに成功。星間ガスの温度が数年のうちに1000万度近くまで急上昇し、X線を放出して明るく輝いていく様子を明らかにした。 ティコの超新星残骸は、デンマークの天文学者ティコ・ブラーエが1572年に観測した超新星爆発の痕跡であり、地球から8000光年に位置する。研究チームは、チャンドラ衛星が2000年、2003年、2007年、2009年、2015年に観測したティコの超新星残骸のX線画像データを解析。画像を時系列に並べて「動画」にすることで、北東部のある領域で、X線が急増光する構造を発見した。 同チームは、この温度上昇から、この領域では、電子や陽子の衝突によるエネルギーの授受を経て加熱していることを観測的に実証。詳細な数値計算と比較した結果、この領域では、電子や陽子が直接は衝突せずに電磁場を介してエネルギーを交換する「無衝突過程」による加熱が起こっている可能性を示唆し、加熱効率を観測的に制限した。 超新星爆発で生じた衝撃波は、宇宙空間を膨張しながら周囲の星間ガスを加熱していく。しかし、加熱の様子をリアルタイムで捉えることは難しく、銀河系内で直接の観測例はこれまでなかった。今回の研究成果は、国際学術誌アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)に2022年11月25日付けでオンライン掲載された。(中條)