東京大学などの共同研究チームは、有機ELディスプレイの次世代の技術である、量子ドット(QD)を用いた「QD-発光素子(QD-LED)」の基幹材料となる純青色QDの精密合成、LED発光に成功。併せて、単分子原子分解能時間分解電子顕微鏡法(SMART-EM)を利用して、QDの動的構造を原子レベルで初めて解明した。
東京大学などの共同研究チームは、有機ELディスプレイの次世代の技術である、量子ドット(QD)を用いた「QD-発光素子(QD-LED)」の基幹材料となる純青色QDの精密合成、LED発光に成功。併せて、単分子原子分解能時間分解電子顕微鏡法(SMART-EM)を利用して、QDの動的構造を原子レベルで初めて解明した。 テレビ向けQD-LEDにおいて、赤や緑のQDは急速に改良が進んでいるが、サイズが数ナノメートル(nm)以下となる青色QDは構造的に純粋、均一に合成することが困難とされている。研究チームは、従来のトップダウンアプローチとは逆の、原子と分子から組み上げる「自己組織化による精密合成」の概念に基づくボトムアップ手法により、一辺2.5nmの立方体QDを合成し、発光波長463nm、半値幅15nm、蛍光量子収率97%を達成。このQDを用いて作製したQD-LED素子に電流を注入し、発色の国際規格である「BT.2020色度」が定める467nmの単色光源に極めて近い純青発光(464nm)を実現した。 さらに、単分子原子分解能時間分解電子顕微鏡という独自分析手法を駆使し、構造がすばやく変化するQDを1フレーム20ミリ秒の映像として撮影。ナノ結晶の構造や表面の配位子の位置を、原子レベルの精度で決定した。 研究論文は、米国化学学会誌(Journal of the American Chemical Society)に11月8日付けでオンライン掲載された。(中條)