北海道大学の研究チームは、紫外線を赤色光へ効率的に変換する塗布型の光波長変換透明フィルムを開発。野菜や樹木の成長促進効果を実証することに成功した。
北海道大学の研究チームは、紫外線を赤色光へ効率的に変換する塗布型の光波長変換透明フィルムを開発。野菜や樹木の成長促進効果を実証することに成功した。 植物の成長には光が必要であり、葉緑素が吸収する赤色の光を効果的に利用することが知られている。一方、紫外線は多くの生物にとってダメージとなる。研究チームは、希土類元素の一つであるユウロピウムの錯体が、可視域に光吸収がなく、紫外線だけを吸収して高効率で赤色光に変換できることに着目。植物生産のための光波長変換材料に利用できると考えた。 チームは、発光性のユウロピウム錯体と透明化剤の混合溶液を市販の農業フィルムに塗布することで、可視光を遮らず、紫外線照射下では赤色に強く発光する光波長変換透明フィルムを作成。野菜(スイスチャード)と樹木(カラマツ)の育成に適用し、成長に有意差が見られることを確認した。光波長変換材料を使った植物育成はこれまでも報告されていたが、塗布型の光波長変換材料を使って、野菜と樹木の成長促進を実証したのは初めてだという。 この技術は、太陽光の紫外線を赤色光に変換でき、電力を必要としないことから、持続可能な開発目標(SDGs)を満たす次世代の農林水産工学分野への応用展開が期待される。研究論文は、2022年10月26日付で、サイエンティフィック・レポーツ(Scientific Reports)にオンライン掲載された。(中條)