大阪大学の研究チームは、高濃度の一酸化炭素や二酸化炭素を含む粗水素が、有機化合物の触媒的水素化反応へ利用できることを初めて実証。粗水素を直接利用した水素化反応により、水素分離と貯蔵を一挙に達成するという、既存の水素精製技術に依存しない新たな水素利用技術のプロトタイプを開発した。
大阪大学の研究チームは、高濃度の一酸化炭素や二酸化炭素を含む粗水素が、有機化合物の触媒的水素化反応へ利用できることを初めて実証。粗水素を直接利用した水素化反応により、水素分離と貯蔵を一挙に達成するという、既存の水素精製技術に依存しない新たな水素利用技術のプロトタイプを開発した。 研究チームは、ホウ素を含む独自開発の分子触媒を利用し、水素に対して大過剰量の一酸化炭素や二酸化炭素が含まれる粗水素を用いた有機化合物の水素化反応を達成。さらに、今回開発した分子触媒が、水素化反応の生成物からの脱水素化反応も進行させることを確認した。 水素貯蔵・運搬では従来より、粗水素からの高純度水素の分離→高純度水素を用いた水素化反応(貯蔵)→脱水素化反応(回収)といったプロセスがとられてきた。このプロセスについては、エネルギー消費量の多いことや、副次的に温室効果ガスが発生することが指摘されており、より環境低負荷かつ経済的なプロセスへと改善するための取り組みが各国で進められている。 今回の技術は、未来の水素源として期待されるバイオマス由来の粗水素やオフガス(製油所の精製装置などで発生するガス)にも適用でき、粗水素を新たなフィードストックとして活用する「粗水素活用社会」の実現に繋がることが期待される。研究論文は、サイエンス・アドバンシズ(Science Advances)に2022年10月26日付けで掲載された。(中條)