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離れたシリコン量子ビット間を接続、量子コン大規模化へ道

2022年10月18日 06時33分更新

文● MIT Technology Review Japan

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理化学研究所などの国際共同研究チームは、シリコン量子ドット・デバイス中の電子スピンを用いて、二つの離れた量子ビット(キュービット)間の量子接続を実現した。量子ドットは、電子を空間的に3次元全ての方向に閉じ込めて操作できるようにした「箱」のようなもので、量子ドット中の電子スピンや正孔スピンは量子ビットの実装手段として知られている。

理化学研究所などの国際共同研究チームは、シリコン量子ドット・デバイス中の電子スピンを用いて、二つの離れた量子ビット(キュービット)間の量子接続を実現した。量子ドットは、電子を空間的に3次元全ての方向に閉じ込めて操作できるようにした「箱」のようなもので、量子ドット中の電子スピンや正孔スピンは量子ビットの実装手段として知られている。 研究チームは、シリコン量子コンピューターで一般的に用いられる歪シリコン/シリコンゲルマニウム量子井戸基板上に微細加工を施すことで量子ドット構造を作製。3つのゲート電極の直下に3つの量子ドットを形成し、これらのゲート電極に加える電圧をパルスで制御することで、単一電子スピン・シャトル(単一電子スピンを一つの量子ドットから、隣の量子ドットへ移すこと)を用いた2量子ビット操作を可能にした。 同チームが、代表的な2量子ビット操作の一つである「制御位相操作」を実行し、その操作忠実度をランダム化ベンチマーク法で評価したところ、操作忠実度93%を達成。研究チームによると、今後、試料設計を含む操作条件の最適化によって、実用的な99%以上まで操作忠実度を向上できるという。 シリコン量子ドット中の電子スピンを用いたシリコン量子コンピューターは、既存産業の集積回路技術と相性が良いことから、大規模量子コンピューターの実装に適している。しかし、量子接続に必要な直接的な結合が最近接の量子ドット中の量子ビット間でしか働かないことが知られており、離れた量子ビット間での量子接続技術の開発が大規模化に向けた重要な課題の一つとなっている。 研究論文は、オンライン科学雑誌のネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)オンライン版に9月30日付けで掲載された

(中條)

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