このページの本文へ

前へ 1 2 3 次へ

F1で頂点を極めた山本雅史氏から学ぶ成功体験の作り方

2022年10月09日 12時00分更新

文● 栗原祥光(@yosh_kurihara) 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

軽スポーツのモックを作るはずが
実車を作ることになった件

 F1の舞台裏を中心に話が進んでいく本著だが、一方で興味深いのが、デザイン室時代の話である。その当時のエピソードは、あまり詳細には書かれていないのだが、ここまでの山本さんの思考法と行動力が凝縮したエピソードなので紹介したい。というのも、この話はASCII.jpではおなじみの軽スポーツ「S660」誕生の物語だから。

S660 Modulo X Version Z

 S660は、本田技術研究所が創立50周年を記念し、2010年に行なわれた社内コンテスト「新商品提案企画」で、デザイン室の若手社員が手軽に乗れる“軽オープンスポーツ”を提案して、1位を獲得したことから始まる。当時、1位を取るとモックアップを作る権利が与えられたのだが、山本さんは上司に実車を作りたいと掛け合ったのだ。

山本 「同じ予算だったら、実車を作ってはどうかと提案したんです。せっかく1位を取ったのにオープンカーのモックアップじゃ面白くないでしょ?」

2011年の「第42回東京モーターショー」で公開されたS660の前身ともいえるコンセプトカー「EV-STER」

 そして、山本さんは企画発案者を責任者に指名して、実車化プロジェクトが始まった。

山本 「僕がみんなに言ったのは、ちゃんとサポートしなさいよと。また、これはみんなの勉強も兼ねているからコストもある程度考えつつやってくれと。デザインも当時のエクステリアのトップにアドバイスで入ってもらったりして。

 そしてできあがったのが「ゆるすぽ」という、S2000を小さくしたような可愛い顔をしたクルマだったんです。これは僕がいつも思っていることなのですが、若い子に考えさせてそれができた。うまくいけばそれが彼らの成功体験になります」

 その後、さまざまな紆余曲折があったものの、S660は世に出て大きな支持を得た。この成功体験というのは、S660に限った話ではない。もちろんF1もしかりである。

世界最高峰のステージで
頂点を極めた方法に生きるヒントがある

 世界的大企業の看板を背負い、世界最高峰のモータースポーツを制した山本さん。「勝利の流れをつかむ思考法 F1の世界でいかに崖っぷちから頂点を極めたか」は、自然体の山本さんが楽しめる自叙伝であり、これからの時代を生きるためのポジティブシンキング・バイブルだ。

 難しいカタカナ言葉を並べ机上の空論をまとめたビジネス書とは異なり、現実に起きたできごとを当事者が日本の言葉で綴られているから、読みながらスーッと身に染み込む。普段本を読まれない方でも、本著を手にされることを強くオススメしたい。

 それにしても、ここまで書いていいのだろうか? と心配になるところも。今回お話をうかがう前、Hondaの広報部に連絡をして「山本さんはどういう方ですか? いろいろ聞いていいですか?」と訪ねた。回答はこうだ「たくさんおもしろいお話を聞けると思いますよ」。

 でも、やっぱり心配になり山本さんに「こんなに書いてしまっていいのですか?」と訪ねた。山本さんは素敵な笑顔で一言「僕は自由人なので大丈夫です。奥さんからもあんたぐらい自由人はいないんじゃないの?って言われるし」と答えてくれた。

■Amazon.co.jpで購入

前へ 1 2 3 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

ASCII.jpメール アキバマガジン

クルマ情報byASCII

ピックアップ