NTT、九州大学、東京大学の共同研究チームは、量子コンピューターの動作に応じて動的に誤りを訂正することで、誤り耐性量子コンピューターの拡張における障害とされてきた「バーストエラー」の影響を大幅に削減するアーキテクチャを初めて提案した。
NTT、九州大学、東京大学の共同研究チームは、量子コンピューターの動作に応じて動的に誤りを訂正することで、誤り耐性量子コンピューターの拡張における障害とされてきた「バーストエラー」の影響を大幅に削減するアーキテクチャを初めて提案した。 宇宙線(宇宙から飛来する高エネルギーの放射線)によって量子ビットに生じる「バーストエラー」は、従来の量子誤り訂正手法では効率的にエラーを削減できないため、量子コンピューターの拡張における最大の課題の一つと考えられている。研究チームは、量子コンピューターの制御機構に論理ユニットを追加することで、超伝導量子ビットに生じるバーストエラーの持続時間や影響範囲を大幅に抑えられる新たな手法を提案した。 研究チームの提案する手法ではまず、エラー推定のヒントとして使われるパリティ値の統計的なふるまいから、バーストエラーの発生を短い遅延で検知。エラーを検知したら、効率は悪いがバーストエラーには耐性のある符号方式に即座にスイッチすることで、検知以降のバーストエラーの影響をほとんどゼロにする。同時に、「バーストエラーが生じた」という情報に基づいて、より正確なエラーの推定と訂正を実行。バーストエラーが生じてから検知されるまでの間に生じる影響をさらに軽減する。 同チームはさらに、今回の提案で主要な変更箇所となる要素について数値実験や具体的な回路実装により、その影響を定量的に評価。今回提案した機構は量子コンピューターの実行速度にほとんど影響を与えないことを示した。 今回の手法はデバイスを問わず、一定の特性を満たす任意のバーストエラーに対して適用可能であり、制御機構の更新のみでバーストエラーの影響を軽減できるため、大規模な量子コンピューターの実現に貢献するという。 研究成果は2022年10月1日に、マイクロアーキテクチャに関する国際シンポジウム「MICRO 2022(The 55th IEEE/ACM International Symposium on Microarchitecture)」で発表された。(中條)