「たてもの」と「まち」のイノベーション第12回

清水建設の「木工場」がすごい

文●ASCII

提供: 清水建設株式会社

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 建設業界外ではあまり知られていないが、清水建設は大手として唯一自社の木工場を持っているゼネコンだ。しかもそれがテクノロジー好きにとってそそられる工場なのである。

 始まりは1884年、深川島田町二番地(現在の江東区木場2-15-3)に清水満之助店木材切組場として作業所を開いた時代までさかのぼる。柱や梁などの構造体が木製だった当時、同社は蒸気動力製材機を設置して需要に応じた。いわば最新テクノロジーを強みとする木材工場だったのだ。

初代清水喜助の“マル喜”マーク

いまだに東京木工場の看板に掲げられている

 戦後、鉄筋コンクリートの時代になってからは、内装工事を中心とした工場へと役割が移った。中でも同社が得意としたのは下地に単板(シート状の化粧板)を貼り付ける練り付け、いわゆるツキ板の造作だ。遠目には無垢一枚板にしか見えない扉板などの加工は今でも同社の看板商品となっている。

練り付け用の単板(シート状の化粧板)

 いまの強みを生んでいるのもまたテクノロジーだ。

 工場に設置されているのはCNC加工機や多軸ロボットなど最新の工作機械。より高度な加工や、斬新な内装設計のために必要になった。工場の職人たちはノミや槌をふるう一方、パソコンに向かいCADの画面とにらめっこするのが日常だ。いまやプログラミングも職人の仕事である。そのあたりについては「最近の木工職人はプログラ厶も書いている」にまとめている。

CNC加工機

 そしていま、木工場はふたたび新たな姿に変わろうとしている。2022年3月から初となる工場の全面建て替えプロジェクトが始まっているのだ。2025年竣工に向け、工場を稼働させながら3年ごしで工事を進めていくのだが、これがまた面白そうなのである。

工場棟と来客棟の2棟体制にリニューアル

パース左(3階建)が工場棟、右が来客棟

 建て替えの主目的は、木工事の技術と木の文化の伝承という東京木工場の重要な役割を踏まえ、「木の文化・技術・魅力の発信拠点」となることだ。

 東京木工場は創業以来工場棟を増やし続け、今では塗装工場などを含めて合計11棟を抱えるに至った。しかし工程別に棟が分かれたままでは作業上の効率が悪いため、1つの工場棟に集約する。

 そしてもう1つの目的は、木工場のいわばソフト面の強化だ。ただ木工場を運用するだけではなく、工場を訪れた人に木の文化や技術の魅力を発信していく拠点とするため、新たに「来客棟」を設けようというものだ。

 メインの工場棟は3階建て。1階には多軸ロボットやCNC加工機などの最新工作機械を設置した「技術開発ゾーン」、2階は塗装場と単板倉庫、3階には昔ながらの大工道具でモノを作る「伝統技術ゾーン」を設置。いずれも見学者向けの見学エリアを設け、技術を間近で見られるようにするという。

工場棟1階の技術開発ゾーン

工場棟3階の伝統技術ゾーン

 一方の来客棟は2階建て。1階は資料館として、同社が手がけた歌舞伎座ひのき舞台などのレプリカを展示予定だ。木について学べる「木育室」も常設する。同社が子ども向けに年20回ほど全国で開催している木工教育「木育活動」を拠点として取り入れ、地域に開いていこうという考えだ。

 パース上、敷地内に広く緑が配されているが、その目的のひとつも木育活動だ。木材のもとになる木や葉っぱにふれ、実際に木材がどうやって作られているかを手ざわりやにおいなどの感覚から学んでほしいと考える。

来客棟2階の執務空間

 ちなみに建設会社らしく、工場自体がショールームを兼ねているところもある。

 工場棟3階の大梁は無垢材に鉄のテンションロッドを使った張弦梁構造になっている。無垢天井にテンション構造が使われるのは珍しいが、これは清水建設の設計部と一緒になって設計したものだという。また、来客棟の大梁は短い部材をつなぎあわせた構造になっている。これは大きな建機が入らない小さな工場であっても組み立てられて、構造上の自由度を上げられるという提案なのだそうだ。

アスキー元編集長が“木育”を受ける動画をYouTubeで配信予定

 アスキー的にはそんな刺激的な木工場を一度取材しただけで終われるわけがない。「私だって“木育”してほしいぞっ!」ということで、アスキー元編集長の遠藤諭が木工場の職人たちから木工レクチャーを受けることになった。かんなと苦闘している元編集長の様子はアスキーチャンネルで2022年11月9日11時に配信予定だ。ぜひとも工場見学気分でご覧いただきたい。

 

(提供:清水建設株式会社)

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