
九州大学の研究チームは、カルボン酸の選択的な触媒的重水素化反応の開発に初めて成功した。重水素をピンポイントで医薬品に導入できるようになる。
九州大学の研究チームは、カルボン酸の選択的な触媒的重水素化反応の開発に初めて成功した。重水素をピンポイントで医薬品に導入できるようになる。 カルボン酸は多様な構造に変換できるため、医薬品の原料として理想的な構造の1つとされている。研究チームは、3種類の試薬(炭酸カリウム3、ピバル酸無水物、4-ジメチルアミノピリジン)からなる触媒系を用いたカルボン酸の重水素化反応を開発。脂肪酸やアミノ酸、ペプチド、カルボン酸を持つ医薬品などの重水素化体の合成を可能にした。 さらに、重水素化したカルボン酸の構造を変換して、エステル、アミド、アルコール、アミンなどの各種官能基変換や炭素-炭素結合形成反応への適用など、重水素化原料としての有用性を実証。重水素化されたカルボン酸を原料として用いて、生物活性化合物を合成し、代謝に対する安定性が向上することも明らかにした。 水素の安定同位体である重水素で置換された化合物は、分子全体の性質の変化を最小限に抑えながら安定性の向上が可能となる。通常の水素を重水素で置換した「重水素化医薬品」は、副作用が少なく効果が長時間続くとされており、今回の研究によって、今後さまざまな位置へ重水素を導入した重水素化医薬品の開発が期待できそうだ。 研究成果は、科学雑誌ネイチャー・シンセシス(Nature Synthesis)に2022年9月5日付けで掲載された。(中條)
