音と坊やに由来する4文字のアルファベット
東京通信工業は、1958年に、社名をソニーに変更した。
ソニーブランドを使い始めてから、まだ3年しか経過していないタイミングであり、当時は「SONYの東通工」とも言われ、東京通信工業の名前の方が浸透していた。また、カタカナや略称を社名にする企業も少ない時代であった。当然のことながら、「そんなわけのわからない社名に変えるのはなにごとだ」とメインバンクは反対し、社員からも反対の声があがった。
だが、もうひとりの創業者である盛田氏は、「我々が世界に伸びるための社名変更」として、これらの反対を押し切った。井深氏も「それでいい、それでいこう」と、社名変更を推進していた一人だ。社内には、ソニー電子工業などへの社名変更を提案する動きもあったが、盛田氏はソニー株式会社の名称にこだわった。それは、ソニーが、電子や通信などに限定せず、これからも世の中にない、まったく新しいものを出す会社であることを示すものでもあった。
SONYには、SOUNDやSONICの語源となったラテン語の「SONUS(ソヌス)」と、小さい、坊やという意味がある「SONNY」をベースとし、発音しやすく、世界共通で使える四文字でまとめた。自分たちの会社は非常に小さいが、はつらつとした若者の集まりであることにも通じるとして、掛け合わせて作った言葉だ。
井深氏が書いた設立趣意書の「自由闊達」の流れを汲み、小さくても、はつらつとしたやんちゃ坊主を語源し、「電機」など特定の事業の意味を含まず、創業者の名前にも縁はない。当時のソニーの姿を示すには最適な社名であったともいえる。
社名にこめられたその精神が継続しているからこそ、いまもソニーは成長を遂げている。

この連載の記事
-
第606回
ビジネス
テプラは販売減、でもチャンスはピンチの中にこそある、キングジム新社長 -
第605回
ビジネス
10周年を迎えたVAIO、この数年に直面した「負のスパイラル」とは? -
第604回
ビジネス
秋葉原の専門店からBTO業界の雄に、サードウェーブこの先の伸びしろは? -
第603回
ビジネス
日本マイクロソフトが掲げた3大目標、そして隠されたもう一つの目標とは? -
第602回
ビジネス
ボッシュに全株式売却後の日立「白くまくん」 -
第601回
ビジネス
シャープらしい経営とは何か、そしてそれは成果につながるものなのか -
第600回
ビジネス
個人主義/利益偏重の時代だから問う「正直者の人生」、日立創業者・小平浪平氏のことば -
第599回
ビジネス
リコーと東芝テックによる合弁会社“エトリア”始動、複合機市場の将来は? -
第598回
ビジネス
GPT-4超え性能を実現した国内スタートアップELYZA、投資額の多寡ではなくチャレンジする姿勢こそ大事 -
第597回
ビジネス
危機感のなさを嘆くパナソニック楠見グループCEO、典型的な大企業病なのか? -
第596回
ビジネス
孫正義が“超AI”に言及、NVIDIAやOpen AIは逃した魚、しかし「準備運動は整った」 - この連載の一覧へ











