2022年3月、シンガポールを拠点とするIT企業「Digital Entertainment Asset Pte. Ltd.」(以下、DEA社)が、カンボジアのサッカークラブ「アンコールタイガーFC」とのパートナーシップを発表した。同社が手掛けるゲームプラットフォームを活用し、カンボジアにおける新たな雇用創出が目的だ。今回は、IT業界、スポーツ業界の両方が注目する同パートナーシップ締結について紹介する。
DEA社の「PlayMining」とは
今回のパートナーシップのキモとなるのが、DEA社が展開するGameFiプラットフォーム「PlayMining」だ。「GameFi」は「Game」と「Finance」を掛け合わせた言葉で、「ブロックチェーン技術を活用して金融の要素を組み合わせたゲーム」を意味する。GameFiのうち、プレーすることでトークンや金銭などインセンティブを獲得できるゲームは「Play to Earn」型と呼ばれ、昨今注目を集めている。
DEA社の「PlayMining」も「Play to Earn」型のプラットフォームで、ゲームをプレーすることでDEAPcoin(ディープコイン、以下DEP)が獲得可能。DEPはDEA社が発行しているユーティリティトークンで、「PlayMining」上で使用されるNFTを購入することができる。日本でも暗号資産取引所の「BITPoint」が2022年1月よりDEPの取り扱いをスタートさせて話題となった。
NFTを活用したスカラーシップ制度
DEPで購入できる「ゲーム用NFT」は、RPGで言うところの「強い武器」や「強い防具」に当たる。強い装備を手にして戦えば、より効率よくお金(ポイント)がたまり、さらに強い武器が手に入るという具合だ。頑張ってゲームをプレーすれば、それだけ多くのDEPが手に入る。強いNFTを購入してまたゲームを楽しむもよし、好きなNFTを購入するもよし、投資に使うのも良しと、さまざまな可能性を秘めている。
「PlayMining」上で所有しているNFTは貸し出すことが可能なため、例えば強いNFTを貸し出してゲームをプレーしてもらい、獲得した報酬の一部をレンタル代として得るということも可能。そのため、ゲーム内には「ゲーミングギルド」という、ゲームのNFTに投資し、所有NFTを多くの人に貸し出して組織的に報酬を得ている団体もある。NFTを借りる側は「スカラー」と呼ばれており、何万人ものスカラーを抱えているギルドがいるゲームもあるほどだ。
スポーツクラブ経済圏の活性化と雇用創出が目的
今回のDEA社とアンコールタイガーFCとのパートナーシップは、上述の「ギルド」の仕組みを活用しようというものだ。具体的には、アンコールタイガーFCがギルドとなってサポーターに所有NFTを貸し出し、DEPを稼いでもらうという仕組みだ。サポーターはゲームをプレーして得たDEPをクラブに直接返すのではなく、DEPを使ってクラブのグッズを買うなど消費に回してもらうことで、スポーツクラブ経済圏の活性化を目指す。
資本力のある団体がギルドとなり、多くの人をスカラーとして抱えるのは、企業が従業員を雇用しているのと同じような仕組み。つまり、ギルドのスカラーシップ制度は「雇用創出」にも貢献する。今回のアンコールタイガーFCの例でいえば、クラブが何万人ものサポーターを「雇用」する形になるのだ。
カンボジアは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経済活動が停滞しており、雇用、就業状況が深刻な状況にある。しかし、今回の取り組みが雇用環境の改善に貢献する可能性は十分にあるだろう。
新型コロナで苦しい状況に陥っているスポーツチームは多くあり、DEA社が展開する「応援しながらお金が稼げる」というモデルには大きな注目が集まっている。日本ではまだなじみのないシステムだが、うまくマッチするスポーツチームは少なくないはずだ。まずは今回のアンコールタイガーFCとの取り組みがどのような成果を挙げるのか、今後に注目したい。