横浜市立大学、東京慈恵会医科大学などの研究グループは、細菌、真菌、ウイルスなどの微生物病原体を近赤外光で選択的に除去できる技術を開発した。薬剤耐性病原体や、未知の病原体は、既存の抗菌剤では除去できない。また抗菌剤を多用すると常在菌まで殺してしまい、腸内細菌のバランスが乱れるという問題がある。
横浜市立大学、東京慈恵会医科大学などの研究グループは、細菌、真菌、ウイルスなどの微生物病原体を近赤外光で選択的に除去できる技術を開発した。薬剤耐性病原体や、未知の病原体は、既存の抗菌剤では除去できない。また抗菌剤を多用すると常在菌まで殺してしまい、腸内細菌のバランスが乱れるという問題がある。 研究グループは2011年にがん光免疫療法を開発している。この治療法では、がん細胞に発現する標的のみを認識するモノクローナル抗体に、近赤外光に反応する化合物を結合させた光反応性抗体を使用する。今回の研究では、がん光免疫療法で使用した近赤外光に反応する化合物と、細菌に反応するモノクローナル抗体を結合させて光反応性抗体を作成した。 黄色ブドウ球菌に反応するモノクローナル抗体と近赤外光に反応する化合物を組み合わせて光反応性抗体を作成し、光反応性抗体が結合した黄色ブドウ球菌に近赤外光をを当てると数分程度で死滅することが分かった。このとき、光反応性抗体が結合しないほかの菌には影響はなかったという。また、黄色ブドウ球菌の薬剤耐性は、この手法では問題にならないとしている。 研究ではこのほかに真菌であるカンジダ菌や、新型コロナウイルスを認識する光反応性抗体を作成し、開発した手法が活用できるかどうかを確認した。その結果、カンジダ菌や新型コロナウイルスでも同じような効果が得られたという。 研究成果は7月4日、コミュニケーションズ・バイオロジー(Communications Biology)誌に掲載された。(笹田)