この数年、亡くなった人のSNSのアカウントが、生前のまま残されているのを目にするようになった。
ある取材先でその話をしていたとき、亡くなった男性の息子さんが、父親のアカウントを引き継いだという話を耳にした。
その男性は、インターネットの黎明期からネットの掲示板などを利用していて、ネット上で多くの人とつながっていた。
その息子さんは、自らが父のFacebookアカウントを管理し、ネット上に父の存在を残すことにした。
毎年、亡くなった男性の誕生日になると、Facebook上に多くのお祝いメッセージが書き込まれる。
デジタルならではの新しく素敵な習慣だと思う一方で、一つの疑問が頭に浮かぶ。
亡父と子は、どうやってアカウントを引き継いだのだろうか?
Facebookの追悼アカウント
Facebookには「追悼アカウント」という機能が用意されている。
Facebookの「設定とプライバシー」では、自分が死んだ際にアカウントをどうするかをあらかじめ設定できる。
おおまかに、選択肢は以下の2つだ。
●Facebook上の友だちを指定し、追悼アカウントの管理人になってもらい、アカウントを残す
●アカウントは削除する
削除を選んだ場合、Facebook側に亡くなったことが伝わると、投稿やメッセージは完全に削除される。
Facebookのヘルプセンターの記載によれば、冒頭で触れた事例のように、家族や友人が追悼アカウント管理人になると、主に以下のことができる。
●追悼投稿をプロフィールに固定
●プロフィール写真やカバー写真を変更
●アカウント削除をリクエスト
一方で、追悼アカウント管理人であっても、亡くなった人に送られたメッセージを読んだり、故人に代わってメッセージを送ることはできない。
では、その人が亡くなったことを、だれがどのようにフェイスブックに連絡するのだろうか。
やはり、家族や親しい友人が、その人が亡くなったことを証明する死亡証明書、死亡記事などをスキャンし、Facebookに送ることになる。
日本には行政が発行する「死亡証明書」はないので、戸籍抄本や、医師が発行する死亡診断書などを送ることになるのだろう。
パスワードを残すには
日々の仕事や生活の中で使っているIDとパスワードはどんどん増えている。
インターネットバンキングやキャッシュレス、仮想通貨など、個人の資産に直結するパスワードも多いだけに、その重要さは日々増している。
パスワードは、アルファベットだけでなく数字や記号を組み合わせ、できるだけ複雑なものにすることが推奨されている。
自分で自分のパスワードを管理するのも大変だが、まして、急に死亡したことを想定するとなると、頭が痛い。
1Passwordというパスワードマネージャーは、マスターキーにあたるパスワードがひとつ分れば、その他のパスワードにアクセスできるアプリだ。
このアプリには、エマージェンシーキットという機能があり、メールアドレスや、シークレットキー、パスワードなどを紙に印刷しておくことができる。
どうしてもパスワードが思い出せないといった際に、この紙を使うという趣旨だが、いざというときに備えて、家族に渡しておくこともできる。
ただ、難しいのは、こちらのパスワードもまめに変更することが求められるだけに、パスワードを変更するたびに、印刷し直すことが必要になる。
まっとうに準備をするには、マメさが必須になりそうだ。
Googleのアカウント無効化
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