理化学研究所、ダルムシュタット工科大学、東京大学、東京工業大学の国際共同研究グループは、4個の中性子だけでできた原子核「テトラ中性子核」の観測に成功した。陽子を1個も含まない、いわば「原子番号ゼロ」の奇妙な原子核を観測したもので、原子核や元素の安定性を決定づける「核力」のモデルを大きく変える可能性があり、中性子が主成分であると考えられている超高密度天体である「中性子星」の理解にもつながると期待できる。
理化学研究所、ダルムシュタット工科大学、東京大学、東京工業大学の国際共同研究グループは、4個の中性子だけでできた原子核「テトラ中性子核」の観測に成功した。陽子を1個も含まない、いわば「原子番号ゼロ」の奇妙な原子核を観測したもので、原子核や元素の安定性を決定づける「核力」のモデルを大きく変える可能性があり、中性子が主成分であると考えられている超高密度天体である「中性子星」の理解にもつながると期待できる。 研究チームは、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」を用いることで、酸素-18(18O)ビームからヘリウム-8(8He、陽子数2、中性子数6)の2次ビームを生成。超伝導RI(放射性同位元素)ビーム生成分離装置「BigRIPS」を用いて8He核ビームを分離・輸送し、多種粒子測定装置「SAMURAIスペクトロメータ」の標的位置に配置した二次標的である液体水素に照射した。 さらに、液体水素標的直上流に設置されたビーム飛跡検出器により、BigRIPSから輸送された8He核ビームの通過した位置と角度を決定。8He核と水素標的中の陽子が衝突し、8He核から4He核だけがたたき出される現象を観測した。 この成果は、60年の長きにわたり不明であった「テトラ中性子核」の存在について、高い統計的有意性を持った情報を与えることになり、ここ20年余りその重要性が指摘されている三体核力の研究を大きく前進させると考えられるという。今回の研究は、科学雑誌ネイチャー(Nature)オンライン版に6月22日付けで掲載された。(中條)