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大腸がんの新たな悪性化メカニズムを発見=北大など

2022年06月27日 06時15分更新

文● MIT Technology Review Japan

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北海道大学、旭川医科大学、国立遺伝学研究所、和歌山県立医科大学の研究グループは、大腸がんの新たな悪性化メカニズムを発見した。

北海道大学、旭川医科大学、国立遺伝学研究所、和歌山県立医科大学の研究グループは、大腸がんの新たな悪性化メカニズムを発見した。 研究グループは、神経ペプチドの一種であるニューロキニンAと、その受容体であるNK2Rに着目。これまで研究グループは、ウイルス感染や細菌感染による炎症反応や免疫応答の際に、NK2Rが樹状細胞やマクロファージに発現誘導され、炎症性疾患の慢性化、重篤化に関与することを明らかにしてきた。ただ、がん患者生体内の腫瘍微小環境におけるNK2Rの発現とがんの悪性化との関連についてはよく分からなかった。 今回の研究では、ヒト大腸がん患者の腫瘍組織のがん細胞を免疫組織化学染色法で調べ、その結果NK2Rが多く発現していることを確認。がんに関する遺伝子変異や遺伝子発現変動などについて解析した公開データ集で、NK2R遺伝子を高発現している大腸がん患者が予後不良であることも確認した。 また、ヒトとマウスの大腸がん細胞株をインターフェロンで刺激すると、NK2RとニューロキニンAをコードしている遺伝子の発現レベルが増加すること、それがJAK1/2阻害剤の添加で減弱することも明らかになった。加えて、NK2R 阻害剤を添加すると、大腸がん細胞の増殖、生存および細胞遊走(細胞が別の場所に移動すること)能が濃度依存的に抑制されることが分かったという。 研究成果は5月13日、キャンサー・サイエンス(Cancer Science)誌にオンライン掲載された。今回の成果から、NK2Rを標的とした神経ペプチドシグナルの遮断によって、大腸がんの悪性かを抑制できる可能性が考えられるとしている。

(笹田)

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