京都大学などの共同研究チームは、軟ガンマ線完全画像化方法に基づいて独自に開発した「電子飛跡検出型コンプトン望遠鏡(Electron-Tracking Compton Camera:ETCC)」を用いて、銀河中心からの軟ガンマ線(エネルギーの低いガンマ線)の直接検出に初めて成功した。
京都大学などの共同研究チームは、軟ガンマ線完全画像化方法に基づいて独自に開発した「電子飛跡検出型コンプトン望遠鏡(Electron-Tracking Compton Camera:ETCC)」を用いて、銀河中心からの軟ガンマ線(エネルギーの低いガンマ線)の直接検出に初めて成功した。 研究チームは、宇宙航空開発機構(JAXA)宇宙科学研究所が運用する気球にETCCを搭載し、2018年にオーストラリアのアリススプリングスから打ち上げ、南半球の空を約1日間観測。軟ガンマ線検出率の時間変化を調べたところ、銀河中心が正中する時刻に合わせてわずかな増減を観測した。同チームによると、これは銀河中心方向に存在する軟ガンマ線放射をとらえたものであり、軟ガンマ線帯域において銀河中心方向がとびぬけて明るい事が判明したという。 軟ガンマ線による宇宙観測は、宇宙線由来の雑音が他波長より数桁強く、その中から軟ガンマ線のみを取り出すための画像化手法が確立していなかったため、可視光や赤外線、X線など他の波長域の観測に大幅な後れをとっていた。今後、ETCCによるさらなる観測で銀河中心方向の軟ガンマ線放射の起源を解明することにより、宇宙初期の密度揺らぎから生成された原始ブラックホールや暗黒物質の研究につながるという。 研究成果は、国際天文学会学術誌「アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)」に2022年5月1日付けで掲載された。(中條)