このページの本文へ

がん転移につながる集団浸潤の仕組み、北大らが解明

2022年05月27日 06時40分更新

文● hitoshi_sasada

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

北海道大学と名古屋大学の研究グループは、がん細胞が集団で周囲の正常組織に広がる「集団浸潤」の仕組みを解明した。がん細胞の集団浸潤は、他臓器への転移につながることが多いとされてきたが、集団浸潤がどのようにして起こるのかははっきりしていなかった。

北海道大学と名古屋大学の研究グループは、がん細胞が集団で周囲の正常組織に広がる「集団浸潤」の仕組みを解明した。がん細胞の集団浸潤は、他臓器への転移につながることが多いとされてきたが、集団浸潤がどのようにして起こるのかははっきりしていなかった。 研究グループは、がん細胞株から集団浸潤しやすいがん細胞と集団浸潤しにくいがん細胞を取り出し、それぞれ増殖させて、性質を比較した。まず、それぞれの遺伝子発現を調べた結果、集団浸潤しやすいがん細胞では転写因子STAT1の活性が高いことが分かった。RNA干渉法を使ってSTAT1の発現を抑制したところ、集団浸潤しやすいがん細胞でも集団浸潤を抑えられることも分かった。 隣り合うがん細胞の間の空間を透過型電子顕微鏡で調べたところ、集団浸潤しやすいがん細胞ではこの空間が密閉されている一方で、集団浸潤しにくいがん細胞では開いていることも分かった。密閉しているこの空間にインターフェロン-β(IFNB)が存在しており、IFNBの発現を抑制することで、STAT1の活性が低下し、集団浸潤しにくくなることが分かった。 研究成果は5月24日、「オンコジェネシス(Oncogenesis)」誌にオンライン掲載された。がん細胞の間にあるSTAT1を阻害することで集団浸潤を抑制できる可能性があることから、今回の研究成果はがんの病理診断の発展につながる可能性があるという。

(笹田)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ