KDDIがレーシングドライバーのスキル向上を目指す実証実験「eモータースポーツ×ブレインテック」を、KDDI、アイロック、VIE STYLE、レーシングヒーローの4社合同で開始し、3月に実際に効果があったというレポートを発表しました(KDDIプレスリリース。
しかし、なぜKDDIがレーシングドライバー育成に名乗り出たのか? はたしてその方法とは? 謎が謎を呼ぶこのプロジェクト。最近クルマの運転が楽しくて仕方ないというアイドルユニット「純情のアフィリア」の寺坂ユミさんことASCII.jp自動車部のゆみちぃ部長に、実際に体験してもらいながら、その概要を紐解いていきたいと思います。
4社合同プロジェクトを開始した理由
KDDIがSUPER GTに参戦する36号車「TGR TEAM au TOM'S」のメインスポンサーを務めているのは、モータースポーツファンなら誰もが知るところ。また日本でも有数の強豪プロゲーミングチーム「DetonatioN Gaming(デトネーションゲーミング)」をサポートするなど、eスポーツの分野にも力を入れています。
その一方、KDDIは「ブレインテック」という脳を科学的に分析し、そのデータを活かして様々な技術に応用するという研究を長年取り組んでいます。過去にはサウナと脳波の研究とか、音楽と脳波の研究などをしてきたのだそうです。そこで新しいプロジェクトとして立ち上がったのが「脳トレーニングに着目した新しいドライビングスキルのトレーニング」。
eモータースポーツと実際のモータースポーツでは操作系において大きな違いはないですし、なにより会社的にもこの2つのジャンルは親和性が高いので、企画が通りやすかったのかも……と思ったり。
検証は4週間にわたり、週に1度、eモータースポーツ2選手に脳トレの後にシミュレーターで練習してもらうというもの。実験の結果、筑波サーキットTC2000のラップタイムが0.6秒短縮したのだそう。2㎞程度しかないコースで0.6秒短縮はスゴイ!
寺坂ユミが実際にトレーニング!
タイムは縮まるのか!?
では実際にどんなトレーニングなのか、われらのゆみちぃ部長に試してもらいましょう。使う道具はノートパソコンとイヤホン型ウェアラブル脳波計のみ。アイドルが頭にいっぱい電極をつけて……という絵を想像していたのですが、たったこれだけ? と肩すかし。担当者によると「電極をいっぱい取り付けたほうがより正確なデータが取れるのですが、誰もが試せるようにこういうカタチにしています」ということで、ウェアラブル脳波計を使っているのだとか。
ノートPCの画面に映し出された脳波グラフ。これが何を意味しているのかはよくわからないのですが、とりあえずアイドルの脳波ということで、取材陣は興味津々。
脳トレーニングは、大きく分けて「提示される図形の色の組み合わせが黄色と赤のとき以外にスペースキーを押下」というような、いわば反応速度を見るようなものと、「〇〇を想像してください。思ったらスペースキーを押下」というタイプの2種類。外から見ていると、何をやっているのかよくわからないのですが、なにやら「脳波にはα波とβ波があり、リラックスしている時はα波が出ているのですが、その出ている時間を短くする」とか、空間把握能力を鍛えるとか、反応速度を鍛えるとか……。そんなことができるのか! と驚く取材陣。そうとは知らず楽しそうに脳トレするゆみちぃ部長。ゆみちぃ部長の脳トレ熱が上がったのか、ノートPCから結構なファン音がしてきました。
そしてシミュレーターで練習。これがワンセットです。シミュレーターはiRacingというプロレーサーも練習で使われているもの。T3Rはクルマの動きに合わせて、シートが動く本格的なものです。はたから見るとゲームセンターで体感ゲームを遊んでいるのと変わらないのですが、これはれっきとした練習です!
ゆみちぃ部長は初めて筑波サーキットTC2000を走行したのですが、ND型ロードスターで1分15秒前後。ちなみにプロドライバーで1分7秒前後ですから、初見で10秒落ちはスゴイ! しかも、AT限定免許の彼女は「シフトチェンジとかよくわからないんですけれど」ということで、3速ホールド状態でこのタイム! これは脳トレによって、彼女の中に眠るドライビングセンスが覚醒したからといっても過言ではないのでは? とおだてると、「私の中の小宇宙(セブンセンシズ)が目覚めたんですよ」と、わけのわからない事を言うドヤ顔部長。とりあえず、ゆみちぃ部長は褒めて伸びる子です。担当者からは「これは鍛えがえがありますよ!」という話を聞いて、さらにドヤる部長。とりあえず才能があるのはわかりましたから、まずは運転免許のAT限定を解除してもらえればと……。
そして最後は特別にVRゴーグルでiRacingを体験。大騒ぎしながらクルマをコンクリートウォールにぶつけまくっていました。こちらはどうやらまだ早いようです。
現時点ではまだPCでしか試すことはできませんし、そもそも開発中のプログラムではあるものの、ひょっとしたら近い将来、auからイヤホン型ウェアラブル脳波計を使った脳トレアプリのセットが出るかも? と思わせるKDDIの新プロジェクト。
現在活躍するプロドライバーの多くは、自動車メーカーの育成プログラム出身ですが、数十年後「KDDI育成ドライバー」が世界で活躍するかも!? そのような色々と夢を抱かせてくれます。この脳トレはほかの分野にも応用が利くそうですので、それもまた楽しみ。
そのうち「スマホで動画を見る暇があったら、脳トレしなさい!」という日が来るかもしれません。ちなみに脳トレは就寝前にやった方が効果的だそうですよ。